冷たいものを飲んだら「痛っ!」と急に歯がしみたので、ひさびさに歯医者に行くことにした。
歯医者は、けっこうごろごろと喫茶店のごとくあちこちにあって、どこも凝ったデザインの建物にしたり、若くてきれいで愛想のいいスタッフを揃えたりと競争がタイヘンそうなんだけど、ここ10年くらいの間、私は浮気せずずーーーっと同じ医院に通っている。(もちろん、なんかある時だけだけど)
こう言ってはナンだけれど、建物はもう耐用年数消化しちゃってる感じだし、駐車場も狭いし、スタッフもベテランさんが2人くらいの小さい医院だ。お客さん(あ、患者さんか・・)も、どーやら昔っから通ってる風のご年配ばかりだし、特に設備が良いとか先生の腕がいいとかの噂も聞かない。(センセー、ごめんなさいっ)
10年くらい前、最初にその医院に行ったのは、一回りくらい年上の先輩が「ま、あそこならここから(職場)近いし、定評があるからいいと思うよ。」と紹介してくれたからだった。当時、親知らずが痛くて痛くて仕事に集中できない状態だった私は、とにかく早く苦しみから救われたくて言われるがままにその医院のドアを開いた。
40代半ばくらいの気さくなジェントルマンな感じ(どんなんだ)の先生が、「歯、抜いたことある?」と私に尋ね、「ないです・・。」と脅えて答える私の手を両手で握って、「大丈夫だからね。」と言ったのを鮮明に覚えている。なんて言うんだろう・・・、恐怖で張り詰めた気持がふーーっとほぐれる感じがして涙さえ出そうだったのを忘れない。
20代の頃の私だったらどう思ったろうと考える時、絶対に同じ気持ではなかっただろうと断言できる。
「ちょっと、なんで手握る必要あるの?やめてよ!」
と思ったに違いないっ。間違いなく私はそういう女だった。(笑)
なのに当時30代だった私は、あまりにも気丈に生き過ぎて、男の人に癒されて信じて身をゆだねる(大げさな言い方だけど・・・)ってことが無かったので、急所を不意につかれたようにホロっときたのだった。
こういうのを「歳とった」っていうんだろうなぁ・・・と思って苦笑、苦笑、苦笑だ。
もちろん、その先生にヘンな感情を持ったわけでもなんでもないけれど、今に至るまであの日の癒しが忘れられずずーーーっとその医院に通っている私っていうのは、そうとう寂しい女丸出しだと自分的に思う。