2021年、メルカリはユーロ円建ての新株予約権付き社債(Convertible Bond、以下CB)を発行し、資金調達を行いました。このCBの条件は投資家や市場関係者の間で注目を集め、その中でも特に株価から見た「異常に高い行使価額」や「利息なし」という点が議論されました。この記事では、メルカリのこの資金調達に焦点を当て、以下の3つのポイントについて掘り下げていきます。                   1. 当時の株価から見て異常に高い行使価額

メ  ルカリのCBに設定された行使価額は、当時の株価と比較して非常に高い水準に設定されていました。通常、CBの行使価額は株価に対して一定のプレミアムが上乗せされるものですが、このケースではプレミアムの幅が大きく、市場から「異常に高い」と見られました。

このような高い行使価額の背景には、いくつかの可能性が考えられます。                 まず、メルカリが中長期的な株価上昇を強く見込んでいた可能性があります。株価が上昇すれば、行使価額に到達し、新株予約権が行使されることで、株主価値の希薄化を抑えながら資金調達が実現します。しかし、プレミアムが高すぎる場合、株価がそこに到達しないリスクも高まり、投資家にとっては行使されない可能性のあるオプションとして受け取られます。                    2. 行使価額が高かったのに利息なしだった理由の憶測

行使価額が非常に高かったにもかかわらず、メルカリのCBは利息が付いていませんでした。通常、リスクが高いCBほど高い利率が求められるものですが、メルカリのCBはゼロクーポン債として発行されました。これについては、いくつかの憶測が考えられます。

まず、メルカリが既存のキャッシュフローや事業拡大の見通しに自信を持っていたことが考えられます。利息を支払う必要がないことで、コストを抑えつつ、株価上昇時には新株予約権の行使でさらに資金を調達できる仕組みを構築していました。また、当時の市場環境では、低金利や中央銀行の金融緩和政策により、リスクを取ってでも成長企業に資金を投じたい投資家が多く、利息なしでも投資対象としての魅力が高かった可能性もあります。                      3. 行使価額に至らないのを想定して行使されないCBを発行した可能性とその倫理的な問題点

行使価額が高いことを理由に、一部では「メルカリが行使されないCBを意図的に発行したのではないか」という指摘がありました。もしこの憶測が事実であれば、企業が実際に株価が行使価額に達しないと見込んでいるにもかかわらず、そのようなCBを発行することは、倫理的な問題をはらんでいます。

具体的には、投資家が株価上昇による利益を期待してCBに投資する一方で、発行体がそれを現実的には期待していない場合、投資家に対して不公平な状況が生まれます。企業がCBを発行する際には、株価が行使価額に達するかどうかを判断する材料を投資家に提供する責任がありますが、これが曖昧である場合、投資家は過度に楽観的なシナリオに基づいてリスクを取ることになりかねません。

また、このようなCBの発行が行われる背景には、既存株主に対する株式の希薄化をできる限り避けたいという発行企業側の意図があるとも考えられます。行使されない場合、株式の希薄化は回避でき、発行体にとっては有利な状況となりますが、その一方で投資家は損失を被る可能性が高まります。                結論

メルカリの2021年のユーロ円建て新株予約権付き社債発行は、異常に高い行使価額や利息なしという異例の条件が付随していました。この背景には、企業の成長戦略や市場環境の影響が考えられますが、同時に倫理的な問題を含む可能性もありました