〈スマートフォンの空〉


僕らは皆 スマートフォンに映し出された空を見ている
今 スマートフォンの空を見ているあなたが世界の何処の人かはわからない
しかし 僕らはスマートフォンに映し出された同じ空を見ている
この瞬間 この瞬間に

僕は今日も横浜の街を這いずり回っている
コンクリートの戦場での ゲリラ活動
諜報活動 あらゆる情報を吸収する
何重にも張り巡らされ 交差した線
線は点と点を結ぶ
様々な欲望 謀略 狂気が氾濫した400万人の都市
垣間みえる 美しさ
LEDの美しい光に曝されていると どんなものもみな美しく見える 
醜い欲望の塊までもが 美しく見える
しかし 光が消えると一瞬にして夢が醒めたように醜さが露呈する

取り残されたホームレス ワイン色の吐瀉物を吐くOL
抑制が外れた若者の獣の叫び声 踏み潰されたタバコの吸殻
現実が重くのしかかり 一瞬にして若さを奪われる
僕はこの街の底辺を今日もさ迷っている
スマートフォンを持って

世界中から届くメッセージ 
僕はこの街のリアルを写真で送る
しかし、痛みまでは伝わるまい
僕は一人ではないけれど
確実に誰かと繋がっているはずだけど
それは、誰?
いったい僕の何がわかるというのだ
あぁ、わからなくてもいい
所詮、人はわからないものなのだ
肉親でさえ わからない
兄弟でさえ わからない
息子でさえわからない
友人でさえすべてを理解するのは不可能だ
真実が伝わらない痛み
あなたの真実が
僕の真実が…

僕はもう街を歩いていても 殺意を感じることはなくなった
しかし 同じように人の温かみも感じなくなってしまった
只々、常温の人間達が周囲を目の前を歩いているだけ
何も感じないわけじゃないし ちゃんと色彩もついている 
しかし 僕は人の愛情を忘れてしまった
只々、様々な人間の意図が伝わるだけ
いっそのこと この世界なんて焼け落ちてしまえばいい
すべて 消え去ってしまえばいい

スマートフォンを覗きこむ スマホの世界はリアルとバーチャルが複雑に入り雑じった空間である
しかし、僕は最近インターネットは確実にリアルに近づいているとおもう
リアルな友人が親までもがスマホの世界にいる
僕はこの状況を悪いとは思っていない
時代の波から取り残された 孤立した陰惨な文化が封印された空間のほうがよほど悲惨だと知ってしまったからだ
世界はもっと繋がるべきだ
知恵を リアル 夢を 共有するべきだ
このようなものは共有して自分の持ち分が減るものではない
共有しろ もっと共有しろ!

街のコンクリートはとても冷たくて
僕も含めて多くの人間はとても醜い
冷たく乾いた風が吹き抜ける横浜の雑居ビルの隙間
スマホを覗いてみると 画面に映し出されているのは 
青く遠いい美しい空


3.14.2017