去る2月5日、日本将棋連盟は女流棋士・アマチュア・奨励会員が各棋戦で優秀な成績を収めた場合の対応を取り決めて発表しました。規定の成績を収めると、女流棋士やアマチュアは棋士編入試験の受験資格が得られ、奨励会三段には次点1が付与されます。 

  

女流棋士・奨励会員・アマチュアにおける 棋戦優秀者への対応について|将棋ニュース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp) 。

 

 なお、上記対応を行う際の各棋戦における基準は次の通りです。

 

    ・ 竜王戦 竜王ランキング戦 優勝
    ・ お~いお茶杯王位戦 挑戦者決定リーグ入り
    ・ 王座戦 挑戦者決定トーナメントベスト8
    ・ 棋王戦 挑戦者決定トーナメントベスト8
    ・ ヒューリック杯棋聖戦 決勝トーナメントベスト8
    ・ 朝日杯将棋オープン戦 本戦トーナメントベスト4
    ・ 銀河戦 決勝トーナメントベスト4
    ・ NHK杯 本戦トーナメントベスト4
    ・ 新人王戦 優勝 

 

 これらの成績をクリアした女流棋士・アマチュア・奨励会員は、第44期新人王戦に優勝した都成竜馬三段(当時)一例だけなので、相当に高い壁となっています。

 

 では、現役プロ棋士172名が各自何棋戦クリアしているのかを調べました。なお、竜王戦ランキング戦優勝は1~6組を対象とします(2月24日現在)。

 全9棋戦クリアは、羽生善治九段・森内俊之九段・丸山忠久九段・三浦弘行九段・渡辺明名人・広瀬章人八段(棋士番号順)の6名です。羽生九段・森内九段・渡辺名人については流石の一言です。竜王及び名人経験者の中で、三浦九段の名前が光り輝きます。先日の第14回朝日杯将棋オープン戦準優勝で、全9棋戦クリアとなりました。

 

 8棋戦クリアは、谷川浩司九段・森下卓九段・郷田真隆九段・藤井猛九段・久保利明九段・木村一基九段・佐藤天彦九段・豊島将之竜王の8名です。森下九段・藤井九段・佐藤九段は朝日杯ベスト4、木村九段はNHK杯ベスト4をクリアしていません。残りの4名は新人王戦優勝経験がないので、全9棋戦クリアはできません。

 

 7棋戦クリアは、青野照市九段・田中寅彦九段・佐藤康光九段・屋敷伸之九段・杉本昌隆八段・深浦康市九段・行方尚史九段・山崎隆之八段・松尾歩八段・糸谷哲郎八段・稲葉陽八段・永瀬拓矢王座・藤井聡太二冠の13名です。

 奇しくも杉本師匠と弟子藤井の棋戦クリア数が同じで、師匠は朝日杯ベスト4&新人王戦優勝、弟子は棋王戦ベスト8&NHK杯ベスト4をクリアしていません。稀代の天才棋士が全9棋戦クリアするのは何年後になるのでしょうか?。 

 

 以下6棋戦クリア13名(桐山清澄・高橋道雄・島朗・南芳一・塚田泰明・井上慶太・阿部隆・中川大輔・先崎学・鈴木大介・阿久津主税・橋本崇載・村山慈明)、5棋戦クリア6名(中村修・中田宏樹・中村太地・菅井竜也・斎藤慎太郎・千田翔太)、4棋戦クリア12名(福崎文吾・脇謙二・富岡英作・畠山鎮・畠山成幸・飯塚祐紀・窪田義行・堀口一史座・小林裕士・戸辺誠・大石直嗣・阿部光瑠)、3棋戦クリア22名(小林健二・神谷広志・浦野真彦・日浦市郎・長沼洋・神崎健二・佐藤秀司・北島忠雄・田村康介・野月浩貴・佐藤紳哉・飯島栄治・横山泰明・佐藤和俊・片上大輔・及川拓馬・阿部健治郎・佐々木勇気・高見泰地・八代弥・増田康宏・佐々木大地)、2棋戦クリア21名(有森浩三・藤原直哉・真田圭一・北浜健介・矢倉規広・中座真・伊奈祐介・千葉幸生・佐々木慎・宮田敦史・西尾明・高崎一生・澤田真吾・船江恒平・黒沢怜生・青嶋未来・高野智史・近藤誠也・都成竜馬・池永天志・本田奎)、1棋戦クリア36名(東和男・泉正樹・西川慶二・小林宏・所司和晴・中田功・石川陽生・木下浩一・小倉久史・平藤真吾・川上猛・岡崎洋・松本佳介・近藤正和・増田裕司・高野秀行・山本真也・金沢孝史・大平武洋・中村亮介・阪口悟・遠山雄亮・瀬川晶司・金井恒太・伊藤真吾・西川和宏・渡辺正和・牧野光則・藤森哲也・上村亘・石井健太郎・梶浦宏孝・大橋貴洸・西田拓也・長谷部浩平・石川優太)。

 

 そして注目の1棋戦もクリアしていない現役プロ棋士は35名(室岡克彦・豊川孝弘・勝又清和・安用寺孝功・上野裕和・村田智弘・藤倉勇樹・島本亮・村中秀史・長岡裕也・村田顕弘・田中悠一・佐藤慎一・門倉啓太・石田直裕・渡辺大夢・竹内雄悟・三枚堂達也・星野良生・宮本広志・今泉健司・井出隼平・杉本和陽・斎藤明日斗・古森悠太・山本博志・出口若武・黒田尭之・渡辺和史・折田翔吾・服部慎一郎・谷合廣紀・伊藤匠・冨田誠也・古賀悠聖)で、何と現役プロ棋士の20%になります。

 この中では、順位戦B級1組経験がある豊川七段、B級2組経験がある安用寺七段、「関西若手四天王の一人」村田顕六段、第53回奨励会三段リーグ戦で一期抜けして、竜王戦2組経験がある三枚堂七段、第6期加古川青流戦優勝の井出四段などは意外な感じがしますが、それだけ日本将棋連盟が定めたハードルの高さを示しています。

 

 昨日2月24日、第34期竜王戦ランキング戦6組4回戦で西山朋佳女流三冠(奨励会三段)が冨田誠也四段に勝ち、ベスト8進出を決めました。もし、6組優勝となれば次点1が付与される。

既に獲得した第66回奨励会三段リーグ戦の次点1と合わせて四段に昇段(フリークラス編入)できる(但し、来期第69回奨励会三段リーグ戦で降段点を取らないこと)。今年6月で年齢制限の26才を迎える西山女流三冠には、どのルートであろうが女性初のプロ棋士になることを願わずにはいられません。