ふくくくく。にゃは。ぬふふふふふ!!ひっぃひっぃつ!
舞台は某県和台市和台高等学校!
その街に高校2年の春転校してきた少女は期待を膨らませていた。彼女は小さい時に見たお祭りの和太鼓が忘れられずぶっとながい間太鼓を叩きたいと思っていたのだ。しかし和太鼓など叩ける機会もなく小学校は演奏会で大太鼓、中学高校とドラムやシンバル木琴鉄琴と様々な打楽器に触れてみたがやはり違う。そんな折に家庭の事情で越してきたこの和台市、和台高等学校。通称わだいこう。間違いない。高名からして和太鼓部がないわけがない。私はこの街のこの高校で和太鼓を叩くんだと校門の前で意気込む彼女。勿論そんな部活は無かった。ので彼女は決意する。ないなら作るまでよ。転校そうそういきなり部活をつくろうとしたものだから変な意味合いで目立っちゃって危うく女子のチームからは虐められそうになるしイケメン男子はちょっと距離置いてるし、キモオタどもはなんか萌え萌えいってるけどそんなの関係ないよね。部活申請はしたけれど集まらない部員。5人以下では部活でなくて同好会というポジションになるらしい。ので部費は無し。まぁ別に構わないけど。それでも集まらない部員、同好会員。その折、教師から朗報。どうやら伊達に和太鼓の名をもじっているだけあって街の商店街には和太鼓のサークルというか青年部らしきものがあるらしい。女性も在籍ありとの事なので放課後早速商店街の人らに話を聞いてみる。なるほどどうやら夏祭りに向けてすでに毎週土曜日は全員集まっての練習をしているらしい。今日は丁度金曜日。明日早速練習を見学させてもらおう。翌日。昼間からyoutubeで和太鼓の演奏動画を漁りつつポテンシャルを高め練習の始まる夜を待った。いそいそと支度をし町民体育館につくと外に溢れる太鼓の音色に私の興奮は極限に達した。しかしそこまで大人数で叩いているわけでもない様子。中を覗いてみると叩いているのは3人。しかも全員が女性。なんという。練習の区切りを見て声をかけて話を聞けば今実際に活動しているのはこの3名のみ。なぜ男がいないのかと聞けば古い歴史があるらしいけど要点で言えば太鼓は宗教的な意味合いで巫女が打つもの、戦に出る男の為に村の女衆が陣太鼓を打ち送り出すもの、胎児が聞く胎内の鼓動によく似ている太鼓の鼓動。という様々な意味合いでこの街では太鼓というものは女性の楽器であるらしい。なるほど。ここで知り合えた友達は3人。同じ市内の違う高校に通う同級生の女の子と商店街で商店経営してる年上の人と同じ市内の中学に通う女の子。もちろん私も今日から仲間入り。まず初めの目標は夏祭りの太鼓演奏。それでもっともっと声をかけて皆と一緒に太鼓を叩くんだ。そして夏祭り。短期間でメンバーこそ増えなかったものの練習と4人の息も合わさって太鼓演奏はばっちりきまった。終わったあとは安堵と嬉しさで皆で泣いた。年上の人は大泣きしてなかったけど、煙草吸いながら多分泣いてたと思う。夏祭りの前にみんなでチームの名前を決めた。晴嵐太鼓。嵐のように激しく、それでいて快晴のように穏やかで。そんな想いを込めて皆でつけた。私この街に来れて本当に良かった。
活動して半年。凄く凄く充実した半年だった。きっと私の人生においてこれ以上の幸せはきっと訪れることがないんじゃないかと錯覚してしまうほどに。
冬。中学の女の子が受験勉強を控え活動に参加しにくくなった。
希望校が受かれば他県の有名校に進学し寮に入るらしい。
冬。同い年だった女の子は彼氏の影響で太鼓をやめた。
今何しているのかも知らない。
冬。年上の女性は事故にあった。酷い交通事故だ。
命こそあったものの、今後の症状では立つこともままならないらしい。
事故の原因を引き起こした相手が飲酒運転なのが許せない。
しかも生きてるし。
きっと一生許すこともないだろう。
END