電車の窓枠に小さい虫がいた。
コバエくらいの大きさで、コバエよりみんなに意識されない存在の小さい虫。
2匹いた。
1匹はひっくり返ってずっとじたばたしてた。
たぶんもう助からない。
もう1匹は、弱ってるけどまだ生きていける感じ。
窓の外へ行こうともがいてた。
休憩なのか諦めなのか、たまに羽を休めてた。
そしてまた羽ばたいて行こうともがく。
でも行けない。
外の世界が見えてるのにきっと窓枠から離れられずにどこへも行けない。
悲しかった。
電車から降りた。
この話をしたかった。
でも出来なかった。
困らせるだけ。
もしくは嫌がられるだけ。
また悲しかった。
そして虚しい。
占いが得意な人に私の名前と生年月日を伝えたら、こう言われたらしい。
私は父親に望まれて生まれてきたと。
嬉しかった。
本当かどうかなんてわからないけど、嬉しかった。
前に、私を励ますつもりでこんなようなことを言った人がいた。
私が生まれるために私の父は死んだって。
言葉の選択を間違えたんだろうと思ったけど、同時にそれじゃあまるで父は私の犠牲になったみたいだとも思った。だから勢いでこう返した。
だったら私は生まれたくなかった。私にそんな価値はない。父親が生きててほしかった。
私の生誕と父の生き死にを関連付けないでほしい。
そしてもし望まれて生まれてきたなら、
生まれてきたことを嘆いて大人になったことを申し訳なく思う。
大人になってから言われた。
私は呪われてるんじゃない。私自身が私を呪ってる。
小さな頃からずっとずっと嘆いている。
そして、もし父がそんな私を知ったら悲しむだろうと思う。
きっと10年後また同じことを言っている。
