『古田 圭子の恋煩い~週末に婚活する女優』 和泉ヒロト
プロローグ
1
「んっ!……ふにぁ……」
大きな木のベンチに腰掛けた圭子は、青空に向かって大きく両手を突き上げながら伸びをした。
朝の風は、まだ少しだけ冷たいけれど日差しはたっぷり暖かい。
「そりゃ、もう4月だしね……」
古田 圭子(ふるた けいこ)は、そんなひとり言をつぶやきながら真っ青な空を見上げる。
間もなく満開を迎える桜の花びらが、辺りの空気を春色に染めていた。
ドラマ撮影のため毎日早起きの圭子は、眠気のためにちょっとだけボーっとしていた。
両手で頬を軽くパチパチと叩いて、自分に気合いを入れる。
膝の上に広げた台本を取って、印刷された文字を追う。
そして、自分の役名の下に書かれたセリフを、もう一度確認した。
初めての連続ドラマ。
それも、とっても大きな役をいただいた。
14歳でモデルデビューしてから、もう11年。
いつの間にか、圭子は25歳になっていた。