12
古びた木の大きなドアを開ける。
そこは、小さなカウンターバーだ。
バー、と言っても食べ物が充実している。
カウンターの奥には小さな厨房があって、そこで料理を作っていた。
落ち着いた雰囲気とミスマッチな、居酒屋のような豊富なメニューがウリの店だ。
俺と詩子は、カウンターの一番奥に隣りあって腰掛ける。
「へぇ……面白いお店……」
詩子は、ニコニコしながら俺の目をじっと見つめた。
俺は少しだけドギマギしながら、皮のカバーの付いたメニューを開いて目を落とす。
「何にしようか? お腹空いてる感じ?」
「うーん、結構空いてるかも……」
詩子が恥ずかしそうに笑う。
ホントに可愛いな、詩子は……。
俺は何故か、昔から詩子のことを知っているような錯覚に陥る。
いや……そんなことはないんだけど、さ……。
「何呑む? 俺は……とりあえず、生!」
「えーっと、あたしも最初は生でいいや!」
「料理は……っと、何か苦手なものある?」
俺がそう訊くと、詩子はこう答えた。
「全然! 何でも大丈夫だよ! 創さんは?」
「あぁ……まぁ、いろいろあるけど……」
「そうなの? しょうがないなぁ……じゃぁ、創さんが頼んでよ!」
「あぁ……分かったよ」
俺は苦笑いしながら、カウンターの奥にいるマスターに注文をした。
「えーっと、生二つと……大根と貝柱のサラダと焼き鳥のおまかせ串と……あと白レバと……」
いくつかの料理を注文する俺に応えるように、ニコニコしながら詩子は頷いていた。