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そして詩子は、何も言わずにまたギュッと俺に抱きついてくる。
俺は、詩子を抱きしめながら感じていたんだ。
そう……詩子の深い悲しみを……。
話してくれないか? 君のお姉さんのことを……。
そんな言葉を呑み込んだまま、俺は優しく詩子の髪を撫でる。
そんな時間が、ただゆっくりと過ぎて行く。
そして詩子が、俺の耳元で囁いた。
「あたしの話……訊いてくれる?」
「あぁ……ちゃんと聞くよ、詩子……」
俺は、いつの間にか詩子のことが心配になっていた。
あの夜の花束を持った女……詩子のお姉さんのことが気になったのと同じように……。
きっと詩子も、深い悲しみを抱えている。
「じゃぁ……ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね……」
「あぁ……分かった。行っておいで……」
詩子は、バッグを持ってブースの扉を開けた。
一瞬、チラッと俺を見た瞳が寂しそうに見えた。
俺は、目の前にある狭いテーブルに肘をついて考えていた。
悪い予感がする……。
詩子のお姉さんに、何かが起こったのだろうか?
そして、何らかの理由があって詩子は俺に逢いに来た。
いったい何があったのだろう……いったい、何が……。
しばらく経っても詩子は帰って来なかった。
そして、30分が過ぎた頃……俺はブースを飛び出した。
おかしい……もしかして……。