33


絢音は、いつまで経っても戻って来なかった。



出て行ったのだから、帰って来ないのは当たり前だ。



それでも俺は、絢音が帰って来るのを待ち続けていた。



絢音からは、連絡もない。



俺は、荷物が減った部屋をボーッと見る。



絢音は、一度に全ての荷物を持って出た訳ではない。



まだ絢音の荷物は、多少残っていた。



でも、それは……服だったり、雑貨の小物だったり……。



それは、俺が絢音にプレゼントしたものがほとんどだった。



そんな事実に、俺はマジで落ち込んでいた。



絢音を探し出して、もう一度俺に振り向かせたい……。



俺には、もうそんな気力はなかった。



絢音は、優しくて本当に良い子だった。


本当に、真面目すぎるくらい真っ直ぐな女だ。



だからこそ、俺のことが許せないんだろうな……。



別に浮気をした訳でもない。


だけど……。



確かに俺は、詩子のことが心にあった。


だけど、それは……。



そんなことじゃない……絢音には、俺に対してきっと許せない何かがあったんだ。



でも、俺は……それに気づけなかったんだ……。



俺は、絢音と一緒に特別な日に飲もうと決めていたイタリアの赤ワインを開けた。



パルミジャーノ・レッジャーノを薄くスライスする。


それは、絢音が好きなチーズの食べ方だった。