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「ねぇ、創さん……駅前で奏(かな)ちゃんのこと……見たんだよね?」


「……あぁ……見たよ……花束を持って、泣いていたんだ……」


「うん……奏ちゃんは、きっと……創さんに逢いたかったんだね……」



詩子の言葉に、俺は一瞬戸惑った。


それって、どういう意味だ……?



俺は、ハッとして辺りを見回す。



この部屋は、奏さんの部屋だったという。


低いクローゼットの上には、いくつかの写真立てがある。



そこには、詩子と一緒に奏さんの写真がある。



あの夜……じっと見ていた訳ではないが、確かに……。


あの花束を持って泣いていた女が、奏さんだと思えた。



「この部屋って……奏さんが使ってた時のままなの……?」


「そう……あたし、たまに来るけど……前のままだよ……」



そう、か……。



そのとき、詩子がこう言った。



「奏ちゃんはね……昔、創さんに逢ったことがあるんだよ……」



えっ?



俺は、覚えていない……。



俺は、もう一度奏さんの写真を見る。


しかし、やはり以前には逢ったことがない気がする……。



「いつ……いつ、俺は奏さんに逢ってるんだ?」


「もう……5年くらい前のことかな……あるパーティーでって言ってた……」


「そう、なんだ……そう、か……」



俺は、覚えていない。


でも、きっと俺に奏さんは逢っているのだろう……。



そのことが今は、とても悔しい気がした。