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有紀は、涙に濡れた瞳を、ゆっくりと俺に向けた。


ベッドに寝転がった有紀から向けられた視線は、俺を動揺させた。


これは、ヤバい雰囲気だ…。



キスくらいしちゃおうかなぁ、と俺は思った。


しかし。


下村のことを考えると、俺にはそんなことはできなかった。


有紀と下村が、昨日終わっていたとしても、当然そうだ。


しかも、俺には美佐がいる。


だから、俺は有紀とキスするわけにはいかないのだ。



俺は、有紀の涙をハンカチで拭いてやりながら、こう言った。


「ずっと友達じゃん。俺も、おまえも、下村も…」


有紀は、微笑みながら、ゆっくりとうなずいた。



有紀は、地元の国立大を狙っていた。


有紀の成績なら、たぶん合格出来るだろう。


下村は、東京の私立大を狙っていた。


つまり、有紀からすれば、俺も下村も、遠い場所へ行こうとしているわけだ。


それに昨日、下村とも何かがあって、有紀の心は不安定になっているのだ、きっと。


だから…。


今日の有紀は、いつもの有紀と違うのだ、と俺は勝手に納得していた。


「あたしね、ひろって呼んでみたかったんだよ…ずっと」


そう言って有紀は、ベッドから起き上がった。


そして、ゆっくりと俺を抱きしめた。



えっ?


有紀の、心臓の音が聞こえた。


そして有紀は、ゆっくりと俺の首筋にキスをしたのだ。


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有紀の突然のキスに、俺は固まっていた。


確かに有紀とは、じゃれあったり、手をつないだりということはあった。


しかし、今の状況は今までにないほど刺激的だった。



俺の体は、自然に反応していた。


思わず有紀を、俺は抱きしめていたのだ。


ヤバい。


これって、かなりヤバい。



「離したくないなぁ…。あたし、ずっとひろのこと見てたんだよ…」


有紀は、そう言いながら、俺に巻きつけていた腕に、さらに力を入れた。


「ヤバいって、有紀…」


俺は、有紀の肩に手をかけて、有紀の体をゆっくりと押し戻した。


「ここまでにしよう…。俺は下村も、おまえも、失いたくないんだよ…」


「ごめんなさい…。そうだよね、ダメだよね…」と、有紀は小さな声で言った。


「そうだよ。これ以上行くと、俺最後まで行っちゃうぜ!」と、俺はおどけて言った。


「…それでも、いいのに…」と、有紀がささやく。


そのとき俺は、有紀が昨日、下村と寝たのだ、と感じた。


なぜだかは、よく分からない。


しかし俺は、そうに違いないと感じたのだ。



「冗談言うなよ。俺は、おまえを抱かない」と、俺は冷たく言った。


そのとき有紀が、突然俺の唇を奪った。


有紀の柔らかい舌が、俺の中に入ってきたのだ。