12月26日。クリスマスイブ
現在の時刻は深夜1時を回っていた。
しかし、従業員たいはまだ眠れなかった。
クリスマスパーティ-の片付けをしていたからだ。
そのうち不満を漏らす者まで出てきて重たい空気のなか片付けはちゃくちゃくと終っていた。
深夜2時13分。
パーティー会場となっていたホールを従業員たちが片付けていると、いきなり勢いよく扉を開ける音がした。
「みんな 聞いてくれ
」
入ってきたのは反町だった。 彼はこのホテルの支配人である。
「DEKOさ・・・イヤ 総支配人からの発表だ
」
DEKOとはこのホテルの総支配人なのだが その姿はめったに人前にふれず
DEKOを知っているものは数少ない。
反町はスーツの内ポケットからなにやら紙を取り出した。
「心して聞いてくれ・・・」
反町はガサガサと紙を広げて 文を読み上げ、みんなに見えるように掲げた。
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| 重要発表 |
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| クリスマスパーティーの片付けご苦労。 |
| 忙しいと思うが、今年から「カウントダウンパーティー」 |
| を催す事が決定した。 |
| パーティーは12月31日に行う。 |
| 準備を進めてくれ |
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| 総支配人 |
| DEKO |
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「何・・・
」 「そ-なの
」 「うわっ大変そう
」
ホールにはザワザワとした声が響いていた。
「反町さん!それってもう1週間もないじゃないですか!!」
声を上げたのは新入りの小池だった。
「やっと昨日クリスマスパーティーが終ったっていうのに・・・・こんなの無理じゃ・・・」
心配そうな顔をしたのはベルガールの伊東だった。
彼女は100人あまりが働くこのホテル1美しいといわれていた。
ホール内はますます騒がしくなってきた。
しかしその声を断ち切るように反町が口を開いた。
「仕方ないだろ。私たちは総支配人のおかげで働けるんだ。っそれに、今までやってきたイベントで失敗したことがあったか
なかっただろ
」
ホール内は一気に静まった。
「とにかう準備を勧めるんだ。今の私たちのやるべきことはそれだけだ。」
反町の威厳のある態度にみんなの顔は真剣になっていた。
「あれッいつの間に・・・・
」
ホテルの廊下という廊下に「カウントダウンパーティー」のポスターが並べて貼ってあった。
最初にこれを見つけたのは小栗だった。 小栗は美男子なのは言うまでもないが、仕事もよくできる好青年だ。
「ねえねえッこれ見て
」
一室でベルガールの水川と柴咲が1冊の旅行雑誌を見ていた。
水川は若いながらも仕事をてきぱきとこなす、柴咲も頼りがいがある。
そのページには大きく「カウントダウンパーティー」の文字と詳しい内容が載っていた。
「やっぱり前から企画されてたんだねえ」
水川はふと時計を見た。
「あっもう時間だ
」
2人は部屋から出て行った。
その頃、厨房では妻夫木がデミグラスソースの仕込みをしていた。
このホテルのデミグラスソースは何十年と継ぎ足しして味を守ってきた。
妻夫木は24歳という若さで料理長となり、デミグラスソースの味を継いだ。料理も評判はよく、何よりモテた
【グツグツ】←デミグラの煮える音。
「うわぁ-
スゴいいいにおいがしますねっ」
デミグラスソースのにおいにつられてやってきたのは真央だッた。 真央は今年、料理学校を卒業したばかりだったが、才能を見込まれてこのホテルの見習いとして入ってきた。
「吉川が材料の計算終ったって-っ」
厨房に飛び込んできたのは利依だ。
利依は真央と同じ経歴でこのホテルに入ってきた。真央ほどの技術は無かったが・・・
味を見る目・・・・いやっ舌があったので(笑)
まだ2人は見習いなので、このホテルの顔であるデミグラスソースにふれることなど許されていなかった。
「僕の祖父の代から引き継がれているんだ。」
妻夫木は目を輝かせながらそういった。
材料の計算を終えた吉川が食材を台車に乗せこちらへと向かっていた。
吉川もまた真央や利依と同じ料理学校を卒業してこのホテルに就職した。しかしなぜだか配属されたのは厨房ではなく食料倉庫だった。
その時っ、客用のプレゼントを抱えて向こうの方から小池が走ってくる。
持っている荷物のせいで前が見えていないのだ。
【ガッチャーン】 「ぎゃ~」
吉川の叫び声が廊下中に響いた。
「いたたたッ す、すいませんッ
」
気の弱い小池は反射的に頭を下げていた。
小池が顔を上げると荷物の下敷きになっている吉川がいた。
「大丈夫ですか・・・・
」
「大丈夫なわけがないでしょッ、まったくもうどこ見てんのよ-」
そう言って吉川は小池の顔を見た。 その瞬間、吉川の胸になにかが刺さった気がした。
「お-い、小池早くしろッッ
」
奥の方から成宮の怒鳴る声が聞こえた。
「今いきま-すっ
」
「本当にすみませんでしたっ お詫びは今度します」
そう言うと急いで荷物を再び抱え 走っていってしまった。
あ然とする吉川。 そしてスグにハっと気がついた
自分の胸に刺さったのは小池の名札についている安全ピンの針だった。
「い・・・・痛っ・・・・・」
傷は浅かったはずなのだが 胸の痛みは治まらない。
もう、これは針が刺さった痛みではなく吉川の心にキュ-ピットの矢が刺さった痛みだった(笑)
「あの人、名前なんていうのかなあ・・・・・・あっ」
吉川は針を抜いた手を見た。 手には名札が納まっている
「小池・・・・・・さん・・・・・・」
吉川はその名札を大事そうにポケットにしまい、何事もなかったのかのように
再び台車を引き始めた。
しかし、ぶつかる前と変わったことがあった。・・・・・・
それは、吉川の顔がほころんでいたということ。