「え?俺って死んだの?」
「うん。まあもっと正確に言うなら仮死じゃな。まあでもすぐに死ぬわい。ほい、これ見て。」
気が付けば頭に輪っかがついていた。周りは真っ白な雲の上にいる感じがした。下を覗けば町が見える。天界というやつっぽい。そして渡された書類には「渡井一茶仮死」と書いてあった。多分マジだこれ。
俺の目の前にいるジェイソンステイサムからカッコよさを抜いたようなハゲの男はどうやら天使らしい。少し前に説明を受けた。それにしては髭はもじゃもじゃで清潔さは感じなかった。なによりおじいさんの天使とか・・・・・・。もっとかわいい子連れてこいよ。美晴ちゃんみたいにかわいい子を。
「今ワシの事汚いとかそう思っただろ。あとかわいい子連れてこいとか思ったろ。」
「うん。」
やべえ、俺の考えていること完全にばれてる。さすが天使。
「あとこれハゲじゃねえから!剃ってるから!毎日早起きして毛を剃ってるだけだから!断じてハゲじゃねえから!」
天使の否定は強かった。でも剃ってるのが本当なら頭に1本だけ異常に伸びた毛があるの不自然すぎやしねえか?
でもなんでだろうか、死んでるからか何も感じないし、全てがどうでもいい。だがとりあえず死因だけ聞いておく。
「なんで仮死なんだよ。おかしいだろ。俺何かしたかよ。」
天使は困った顔をする。
「何も覚えとらんのか?」
え?
天使からの言葉に少し考える。
その日は朝起きて高校に行って部活して・・・・・・。
「何も変わらない普通の日常だったぜ?」
はぁ。とため息だけつかれる。
「そうか。何も覚えておらんのじゃな。」
悪かったな。
「あの後お前は部活が終わって着替えを終わらせ、お前が気持ち悪く一方的に好意を
寄せとる北野美晴ちゃんと遭遇したじゃろ?」
色々天使に言い返したいことはあったがぐっとこらえて天使の言う事を少し思い出してみる。
確かにサッカー部での練習を終えて身支度を済ませて部室を出たのは覚えてる。美晴ちゃんとそのあと・・・・・
「確かに会ったかも。」
俺は何となくだが思い出そうとしていた。
「その時美晴ちゃんはな、お前の親友の大槻俊くんとキスしとったのじゃ。」
俺は天使の言葉を疑った。
大槻俊ってのは学内では不良で有名人だった。毎日お騒がせな野郎だった。
「なんであんなやつと美晴ちゃんが・・・・」
それを想像した瞬間俺の視界が真っ暗になりつつあった。
「そう、それじゃよ!」
俺が倒れそうになった瞬間天使は叫んだ。
「キスする瞬間をみたお前さんはそのショックで仮死状態になったのじゃよ!」
は?言ってる意味が分からなかった。
「俺の死因ださすぎない?」
「いやマジだせえ笑こんな死因聞いたことねえよ笑」
天使、てめえぶん殴るぞ。
「そんで今現在は病院に搬送されて家族で意識が回復するのを待っているって感じじゃ。」
そんな事を聞いた瞬間俺はじっとしてられなかった。
「じゃあよ、何とかして俺をよみがえらせてくれよ。仮死なんだろ?しっかり死んだワケじゃないんだろ?」
「うーん、でもなぁ早々蘇らせるのはなぁ・・・・・。色々規律あるしなぁ・・・・。神様に相談しないといけないしなぁ・・・・。」
天使はすげえもじもじしていた。その態度に俺のイライラゲージが溜まっていくのが自分でも分かった。何を迷う必要があるのだ!
俺はイライラを抑えられなかった。
俺の中でプチンと何かがキレた音がした。俺はもじもじした天使の1本だけ生えた異常な毛をわしづかみし
「いいから蘇らせろクソジジイ。毛持ってくぞオラ!」
と叫んでいた。
それをされた瞬間、天使は目に涙を浮かべていた。
「待って!やめて!その髪は最後の希望だから!分かった!すぐ蘇らせるから!だから離して!最後の1本って君が思う以上に大切だから!意識戻してやるから!3、2,1!」
そういう訳で蘇えった。
俺がむくっと起き上がった瞬間家族がすげえ驚いたのは分かった。
だが俺は親と話す暇もなく病院を裸足で駆け抜け、あの子の元へと駆け抜けていった。
見つけた。二人はいちゃいちゃしている。
「美晴ちゃん!そんな男からは離れろ!君みたいな清楚なお嬢様がそんな男とくっついちゃいけない!」
俺は必死の説得をする。
「一茶くん!どうしてここに?」
「ああん?なんだぁてめえ?」
大槻俊もなかなか虫の居所が悪そう。
「御託はいい!俺と勝負しろ!俺が勝ったら別れてもらう!行くぞオラァ!」
俺はそう言い、殴りかかる。相手だって不良だ。俺だって無傷で済むなんて思っていなかった。
「くらええええ!」
渾身の右ストレートが大槻俊の頬を歪めた。吹っ飛ばされる大槻俊。
「い、いたいよぉぉぉぉぉ」
赤ちゃん言葉でわめきだす大槻俊。
「え?」
俺は戸惑っていた。
「ママ!ママァ!」
大槻俊の言葉からはかっこよさがない。美晴ちゃんが大槻俊にかけより
「はいはい、しゅん君がんばりましたねえ。よしよし。」
膝枕をして大槻俊をなぐさめる美晴の姿があった。
「一茶くん!私たとえ俊君とお付き合いしてなくてもあなたとそういう関係になってなかったと思う!見た目と性格が好みじゃないもん!だからごめんなさい!」
チーン。
俺は真っ白な灰になり燃え尽き、生涯を全うした。
目が覚めると俺は天界におり、またハゲの天使がそこにいた。
「ごめん、もうこれあれだわ。マジで死んだ奴だわ。これどうにもできねえやつだわ。」
天使も何とも言えない顔をしていた。
「待ってくれ!もしかしてフラれたショックで俺完全に死んだの?仮死でもないの?」
「うん。」
天使の無慈悲な回答に死にそうになった。(実際はもう死んでるけど)
「何とか生き返れないのか?頼むよ!あんた天使なんだろ?」
「ないことはないが・・・・」
お茶を濁す天使。
「あるなら早く教えてくれよ!」
「あれ。」
天使はどこかを指さす。その方向を見る。禍々しい門があった。
「あの修羅の門という魔王様がいるところで100の試練に耐えれば生き返ることはできるんじゃがまあお前さんじゃできっこない・・・・ってあれ?」
俺はその門に向かって駆け出していた。
「じゃあな!天使ちょっくら蘇えってくるわ!」
彼が生き返るころには美晴ちゃんが家庭を持っていてこっぴどくふられるのはまた別の話。


