《基調報告》


1 私たちをとりまく情勢

私たちは戦後政治の大きな転換点ともいうべき時代にいる。その全ての理由は戦後最悪内閣・安倍政権によるものだ。第1次安倍政権において主眼とした「戦後レジームの脱却」「美しい国、日本」とは、まさに日本を普通に戦争ができる国にしようとするものだった。

 

お腹が痛くて政権の表舞台から消えたはずが、再度の安倍政権誕生は国民にとって、たちの悪いブラックジョークとしか思えなかったが、ジョークでは終わらなかった。祖父の怨念を晴らすことしか考えていない孫・晋三は憲法9条をはじめとする平和憲法の改憲を自己目的化した。

 

そのためには国是である立憲主義を全面否定し、議席の数にまかせて強行し続けた悪法は枚挙に暇がない。マイナンバー制度で個人の情報を把握し、特定秘密法で国民の目も口も耳も支配しようとしている。戦争参加の道筋として辺野古への新基地建設、南スーダンへの自衛隊のPKO派遣、オスプレイの配備拠点化を進め、原発再稼働と原発輸出を進めている。国民の反対を無視して戦争法、共謀罪を強行採決した罪は「戦後最悪の戦犯」といえるのではないか。

 


経済でも安倍内閣の「高支持率」の根拠が「好景気」とはこれまたブラックジョークだ。アベノミクスの失敗は明らかだ。円安により大企業の収益が増えただけで実質賃金は下がり、GDPは伸びず、国民に「好景気」の実感がないのは当然だ。消費は冷え込み続け、格差問題は悪化の一途である。「1億総活躍プラン」は一言でいえば労働者への搾取の拡大強化だ。派遣労働者の使い捨てを常態化する派遣法改悪、企業の意をくみ賃金抑制のための残業手当ゼロ法案は、低賃金・長時間労働・過労死を助長させ、大企業のブラック化を進めている。これが安倍内閣の経済政策である。

 

「安倍一強」といわれて図に乗った安倍政権は追い込まれつつある。この間の強権政治や、森友、加計学園問題。安倍首相が任命したお友達閣僚や議員の度重なる失言、暴言、不祥事、そして闇献金疑惑。それでも居直る安倍内閣に支持率は急降下した。先日の都議選における自民の歴史的な大敗は当然の結果だ。来年に予定されている総選挙でも「安倍政治を許さない」国民的な声と行動で、安倍自公政権に鉄槌を下さなければならない。戦争法反対運動で示した市民の力は、参院選の野党共闘で実を結び、「市民連合」の役割はさらに大きくなっている。「主役の会」も無関係ではない。問題意識を共有し、情勢を注視していく必要がある。

 

2 八千代市が抱える諸問題

(1)開発・ハコモノ優先の服部自公市政がスタート

市長選では、公約の目玉として、東京メトロとの合併を前提とした東葉高速鉄道運賃値下げ、京成線高架化、再開発による人口流入などを掲げた服部氏が当選した。しかし、得票率は38%に過ぎない。それを議会で支えるのが議会多数派の自公会派であり、無節操に追随する民進会派である。「行政と議会は車の両輪の関係」といわれるが、緊張関係のない「なんでも賛成」の多数派与党に、市民の立場で行政をチェックする役割は果たせない。

 

東葉高速の運賃値下げについては、6月議会での答弁で「いつやるとは言っていない。できればメドをつけたい」と、早くも公約の目玉を横に置こうとしている。東葉高速には、建設時の2,650億円もの長期債務がある。これだけの借金を抱えた会社と合併する企業は稀有だ。任期中に運賃値下げのメドがつかなければ公約違反が問われることは必至である。

 

服部市長は、副市長人事を県の幹部職員を出向させ任命しようとしている。また、防災危機管理監ポストを設置し、退職した幹部自衛官の天下りを受け入れ任命することを明言した。地方自治体は国や県の出先機関でも下請け機関でもない。こうした人事は市民主体の住民自治組織を歪める。

 

(2)市庁舎整備、公共施設再編が重要課題に

市庁舎整備については、従来の方針である「耐震化・大規模改修」を秋葉前市長はトップダウンで突然「建て替え」に方針変更した。毎年5億円、6年で30億円の積立基金と歳出で、約105億円の建設費による事業計画を進めた。市庁舎整備については「アンケートで広く市民の意見を聞く」と発言したが、「市民説明会」では「建て替えありき」で、説明も市民合意も無視した。

 

服部市長は「年金者組合」の公開質問状で「耐震補強」と回答しながら、当選後、「建て替え」に豹変した。秋葉前市長の下で作成した「建て替えありき」の4000名対象のアンケート調査は、6月実施を7月に変更した。アンケートに建て替えと補強の比較資料を同封するというが、事前公開はしないという。建て替えを前提としたアンケートという性格は変わらず、「補強」の選択肢を与えないまま参考資料として、両案の比較資料を添付するというまやかしである。服部市長はまやかしのアンケート調査で建て替えの既成事実化を狙っている。

 

総数54棟ある市有施設のうち、建替えや用途廃止等のため耐震診断は実施しない15棟は別にしても、第1期の耐震診断で、すでに11棟が耐震不足となっている。残りの15棟にいたっては耐震診断の予算がいまだに計上されていない。

 


公共施設は市庁舎だけではない。公共施設に課せられている「利便性と安全性」が後回しにされている。仮に予算に無理があれば、従来の方針であった耐震補強、大規模修繕を選択肢とし、他の耐震不足施設の対策と並行して進めるべきである。

 

(3)借金財政を無視した開発・ハコモノ強行の恐れ

6月議会で市の財務部は借金について「573億円の市債があり、5億円の市債が増えた」と述べた。約160億円の債務負担行為を含めれば借金総額は732億円に達する。これから新川ハコモノ建設による市債の償還が始まる。八千代市の借金財政体質はなんら改善されていない。

 

服部市長は、「財政難」とか「財政の健全化」という問題意識は 皆無である。自民党の市長選公募討論会で、「市の財政は危機的状況にない」という驚くべき認識を示したが、選挙中でも6月議会の所信表明や答弁でも、一言も言及していない。服部市長の街づくりの柱は、京成線高架化、再開発など、典型的な開発・ハコモノによる人口流入である。これらの実施には、多額な原資が必要とされるが財源には触れていない。任期10年で八千代市の財政をボロボロにした豊田市政と同じ道を進む恐れが強い。市の動向を監視し、必要な市民運動、財政分析などを進める必要がある。

 


3 この間の取り組み

(1)「基本政策」の協議

本年度は春から夏にかけて役員会議を幾度となく開催し、「基本政策」策定の議論を続けた。市長選を展望するうえで欠かせない議論だった。前市長選で策定された基本政策をひとつひつつ再検討し、情勢と市民の声に沿った政策を練り上げた。これにより、政策面では市長選に向けた準備が整った。

 

(2)市長選「初の市民派女性市長誕生」へ向けて奮闘

①市長選における会の立場と任務

会は去る3月13日に記者会見をおこない、「秋葉市政の当初の市民派市長の看板は明白な偽り」と表明。また、保守系3候補者についても「開発・ハコモノ優先の豊田市政10年で八千代市が財政難に陥ったことを問題として、会の前身であった『市長リコールを実現する市民の会』が豊田市長のリコール運動に取り組んだ経緯を考えれば、これまた、支持できないことは当然だ」と会の立場を明確にした。

 

なによりも「保守系も嫌だが、秋葉も嫌だ」との思いを持った多くの有権者に 「市民が主役の市政」を実現するための新たな選択肢(受け皿)を提起するのは会の任務であった。市長選に向けて取り組むことの意義を訴え、4月6日に谷敷候補擁立を宣言したのである。

 

②初の市民派女性市長誕生へ草の根運動を展開

選挙戦において谷敷候補は市民が主役の会と政策協定を結び、「市政への市民参加、市民合意にもとづく財政再建、情報公開の拡充、市民サービスの向上」をコンププトに① 子育て教育が安心できる八千代市に②お年寄りに安心、だれもが住みやすい八千代市に③医療体制の強化、女性の地位向上を推進する④行政を見直し市民優先の財政運営 に⑤市民合意による市庁舎整備と公共施設メンテナンスの充実、等を基本政策としつつ、「初の市民派女性市長を」「市民の暮らしに寄り添う市政」をキャッチフレーズに、精力的に草の根運動で選挙戦を戦った。

 

③評価されるべき谷敷候補善戦

投票率37.29%という低投票率は、いわゆる無党派層の掘り起しを追求したわが陣営には逆風となった。しかし、選挙期間が僅か50日、少ない資金という状況で、現職の秋葉、組織票で固める保守系3候補と対峙して、「現職・秋葉有利」という下馬評のなか、谷敷登場で選挙の構図を変えた。5人中の3位(9135票)は善戦と言える。

 

(3)市長選における今後の課題

①市長選の候補者選定を早期に取り組み、早い時期の候補者決定に努める。

 


②選挙戦全体の対決軸を早期に定め、市民運動、議会対応などと連動させ、立体的に組み立てるように準備する。

 


③前市長候補、自民推薦候補、2名の保守候補とわが陣営という複雑な選挙構図だった。結果として自民推薦候補へ批判が不十分だった。的確な情勢判断とその対応に努める。

 

4 さらなる運動の発展に向けて

(1)財政再建に向けた運動の継続と発展を

①引き続き、開発・ハコモノ反対運動を

財政問題と連動した課題であり、会の運動の契機となった「新川ハコモノ」に対する取り組みも継続していかなければならない。利用率が当初目標の1割台でしかない農業交流センター。活用されない4億円の橋。農協に二束三文で叩き売られようとしている旧農業研修センター。ガラ空きの市民ギャラリーは、豊田~秋葉市政によるハコモノ行政の問題と矛盾の象徴である。

 

昨年、国交省の指示で市が実施した「新川周辺地区都市再生整備事業」における市民満足度に関する「数値目標の達成状況」について「図書館・市民ギャラリー」「多文化交流センター」「総合グラウンド」「ふるさとステーション」などへのアンケートで、すべての施設において数値目標を達成できなかった。その場合、対策を踏まえて「フォローアップ報告書」の作成と提出が義務付けられているにもかかわらず作業が頓挫していることにも見られように「新川ハコモノ」はやはり失敗したのである。

 

②「市庁舎整備問題」市民合意を求める運動を

耐震化不足の施設が多数あるなかで、市庁舎優先の整備計画は市民の安全・安心の担保という行政の義務をないがしろにするものである。会は、市庁舎建て替え優先か、公共施設全般の安全対策かを市民に問題提起し、過日のアンケートに関する要請に続き、服部市長に市民合意を求める取り組みを急ぐ。

 

③次期市議選で市民の声を結集させよう

来年は市議選があり、市民の声をダイレクトに議会に反映させる絶好の機会である。主役の会としては特定の候補を推薦しないが、「もう当選させたくない議員」に対する批判をすることを通して市民に有益な候補を当選させることに繋がる。それが市民の声を結集させることになる。前回は協力関係にある「情報公開と市民の会」がいわゆる落選運動を展開した。わが会も工夫して取り組む。

 


④情報公開、行政と議会の見える化を

秋葉市長による「公文書改ざん」で情報公開の在り方と重要性が問われた。市政の主役は市民である。市民への情報公開と共有を徹底させなければならない。

 


また、市民の知る権利を保障するとともに市民参加も保障させなければならない。議会においても同様であり、議会の「見える化」と、市民参加型の「議会基本条例」の制定が必要だ。会は市政における市民への情報公開と共有、そして市政参加を強く求めていく運動を推進する。

 

(2)服部自公市政へ市民の監視の目を

開発・ハコモノ優先の、豊田路線回帰の服部自公市政が誕生した。730億円の借金には無関心で、専ら八千代市の財政をボロボロにした豊田路線回帰を目指す服部市政への市民の監視の目は極めて重要である。

 

さらには、議会の側で服部市政を支えようとする自公(民)会派への市民の監視と声が求められる。組織的に傍聴を呼びかけ、常に議員に圧力をかけつつ、監視することが必要だ。本議会だけでなく各常任委員会にも積極的に傍聴しよう。議員は傍聴席の市民の目がこわい。粘り強く取り組もう。

 

(3)市長選をバネに会の組織強化を

①地域ブロック会議の再構築

有名無実化していたブロック会議は、市長選で再組織化された。これがバネとなる。まだまだ不十分ではあるが、どれだけ各ブロック会議を機能強化させることができるかが、組織強化という点では試金石となる。会に参加している市民は残念ながら女性や若者が限定的だ。それらの会員数の増が運動の拡大が組織の活性化に繋がることは間違いない。各ブロックは各地域での課題に取り組み、地域ならではの課題、要求に根ざした市民運動を構築することが必要だ。

 

②役員会議、ブロック会議の定例化

ブロックの報告、問題提起を持ち寄り、会の運動として発展させる。役員会議を定例化させる。また、ブロック会議も状況に応じて定例化する。

 

③宣伝活動の強化

ビラなどを定期的に発行し、地域、駅頭などに情宣活動する。組織内の情報媒体も発行する。また、現在も展開されているホームページも充実化さえ、情報共有の拡大に努める。

 

④様々な市民運動との連携を

わが会は「市民が主役の市政実現」をメインスローガンとし、市民自治の確立を目指す市民団体である。その趣旨に沿う様々な運動や団体・グループとの交流や連携も積極的に行う。

 

(4)高まる会への期待と責務

市民が主役の会は、今後、拡大されるであろう服部・自公(民)会派による「腐敗した両輪の関係」による市政に対して監視を強化し、共闘が可能な議員と連携しつつ、諸問題を追求していかなければならない。

 

また、市長選の結果は、市民が主役の市政実現への取り組みに弾みをつけた。今回の一定の成果がステップとなり、市民の会への期待と責務が高まったことを認識するべきである。会のテーマは4年に一度の市長選に特化しているわけではない。今後とも市民自治の確立=市民が主役の市政を、真に実現するための市民力を体現することを恒常的に追求することは会の重要な責務である。

 


6 会計報告・監査報告

①報告者  柿崎  孝(別紙参照)

②監査報告 田宮 正信(別紙参照)

 

7 役員人事

① 会則第5条及び6条に基づき、下記を役員とする。

●役 員

代 表      今村 弘美(再)

副代表     杉田 尚志(再)

副代表     浦   卓夫(再)

副代表     谷敷 時子(新)

事務局長   三田   登(再)

事務局次長 伊原   忠(再)

事務局次長 稲葉 尚志(新)

会 計      柿崎   孝(再)

会計監査   一柳 峯幸(新)

 

●ブロック会議責任者

①八千代台ブロック

 植田 進

②高津・緑ヶ丘・大和田新田ブロック

 大亀 孝

③睦・阿蘇・上高野・米本ブロック

 伊原 忠

④村上・下市場ブロック

 稲葉尚志

⑤大和田・萱田町・萱田・ゆりのきブロック

 小林悠二

⑥勝田台・勝田ブロック

 小澤茂信