あるところに小さな男の子がいました。
その子が通う事になった学校は、とても大きな学校でした。
でも、教室には、外からすぐに入れるドアが
ついていたので、小さな男の子は、
学校がそんなに大きく感じなくなりました。
何日か過ぎたある朝の事、先生が生徒に言いました。
『今日は、みんなでお絵かきをしましょう。』
すると、小さな男の子は
『うれしいな!お絵かき大好き!
ぼく、何だって書けるんだぞ!
ライオン、トラ、にわとり、牛、汽車・・・それから、
えーっと、ボート!』
小さな男の子がクレヨンで描き始めようとすると、
先生は生徒達の手を止めて言った。
『まだ始めないで、ちょっと待ちなさい。』
先生は教室を見渡し、生徒全員が用意できたのを
確かめると
『はい、いいですよ。今日はお花を描きましょうね。』
と言った。
『うれしいな!』
小さな男の子は、さっそく、ピンク、オレンジ、
ブルー、のクレヨンで、色とりどりの花を書き
出しました。
その時、また先生が生徒達の手を止めて言った。
『みなさん、こっちを見て。お手本を描きますからね。』
先生が黒板に描いたのは、緑の茎に咲いた
赤い花だった。
『はい、こんな風に描くんですよ。さあ、始めなさい』
小さな男の子は、先生の描いた絵と、
自分の絵を見た。
そして、自分の描いた絵の方がずっと好きだと思った。
でも、何も言わずに、お手本通りに描きだした。
緑の茎に咲いた赤い花を・・・
ある日の事、小さな男の子は、外からすぐに
入れるドアを開けて、教室に入った。
授業が始まり、先生が生徒達に言った
『今日は粘土細工をしましょう!』
すると小さな男の子は
『うれしいな!ぼくは、いろんなものが作れるぞ!
蛇、雪男、ねずみ、えーっと、それから車にトラック!』
小さな男の子は早速ねんどをこね始めた。
すると、先生は生徒達の手を止めて言った。
『まだ始めないで、ちょっと待ちなさい。』
先生は教室を見渡し、生徒全員が用意できたのを
確かめると
『今日はお皿を作りますよ。』と言った。
『うれしいな!』
小さな男の子は、いろいろな形や大きさの
お皿を作り始めた。
その時また、先生が言った。
『皆さんこっちを見て、お手本を作りますからね』
先生が作ったのは深皿だった。
『はい、こんな風に作るんですよ。さあ、始めなさい』
小さな男の子は、先生が作ったお皿と、
自分が作ったお皿を見た。
そして、自分が作ったお皿の方がずっと好きだと思った。
でも、何も言わずに粘土をこね直すと、
お手本通りの深皿を作った。
やがて、待つ事、観察する事、先生のお手本通り
にまねる事をその子は覚えた。
そして、自分の好きなものを作ろうとは
もう思わなくなっていた。
ある日の事、小さな男の子は、家族と一緒に
新しい町の新し家へと引っ越して行き、
新しい学校に入った。
この学校は前の学校よりも、ずっと大きかった。
それに教室には外からすぐには入れるドアが
ついていなかった。
教室に行くには、大きな階段を上り、
長い廊下をずっと歩かなければならなかった。
新しい学校での第一日目のこと、
先生が生徒達に言った。
『今日は絵を描きましょう。』
小さな男の子は
『うれしいな!』
と言って、先生の指示をただじっと待った。
でも、先生は何も言わなかった。
生徒達の間を見て歩くだけだった。
先生は、小さな男の子のところに来ると
『どうして絵を描かないの?描きたくないの?』
と聞いた。
小さな男の子は、
『描きたいけど・・・、何を描けばいいの?』
と答えた。先生は、
『描いて見せてくれないと、何の絵になるかわからないわ』
と言うと、男の子は
『どうやって描けばいいの?』
と聞いた。先生は
『どうやってって・・・好きなように描けばいいのよ。』
と答えた。
『どの色を使っても良いの?』
『もちろんよ。もし、同じ色で同じ絵をどの子も描いたら
先生には誰がどの絵を描いたのかさっぱりわからなく
なってしまうわね』
『ぼくにも、きっとわからなくなるだろうな・・・』
小さな男の子はそうつぶやくと、
ピンクとオレンジとブルーのクレヨンを取り出し
色とりどりの花を描きだした。
この学校の教室には、外からすぐに入れるドアが
ついていないけれど、小さな男の子は、
この新しい学校が大好きになった。
- ヘレン・E・バックレー -
人の話を良く聞いたり、観察したり、真似したりする
事を覚えるのは、とても役に立つ事だと思います。
しかし、自分の個性を完全に殺してしまうと、
周りも、そして、自分自身も、あなたが何者か?
どんな才能があるのか?
そして、何がすきか?何をやりたいのか?
すら、わからなくなってしまいかねません。
あるデータでは11歳の男の子や、女の子から
80代の方まで、みな、その人独自の
ミッション、個性を持っているという事。
そして、その自分らしさを取り戻した時、
とても輝いているという事。
これからの時代は、誰にでもできる事ではなく、
個性をプラスした仕事をできる人が、
高い評価と報酬を得ることになるでしょう。
もし、あなたが、この小さな男の子のように、
自分らしさを表現する方法を忘れてしまって
いるなら、もう一度、取り戻す時かもしれません。