「名前も知らぬ元競走馬3頭のこと」
数十年程前のこと。とある田舎の、建設会社の社長が競馬好きがこうじて、引退した。
競走馬3頭を買ってきて、自宅近くの空き地を馬場にして乗馬をはじめた。
馬の内1頭は中央競馬を引退した牝馬で残る2頭は地方競馬を引退したアラブだった。
馬たちを引き取ってから2年が経過した頃、その社長がすい臓がんにかかった。
闘病の甲斐も無く、結局社長は他界した。
葬儀の日のこと。
社長の自宅と馬場は200mもはなれている。
そのあいだには建物はなく田畑がひろがっている。
いよいよ出棺となって、社長を入れた棺が自宅から運び出され、霊柩車に納められようとすると、200mもはなれた馬場にいた。
3頭の馬が、いっせいに泣いた。
馬たちには、飼い主=社長との永久の別れが、わかったらしい。
社長の遺体は棺に納まっており、見えるはずもない。しかも、200mも離れている。
馬も悲しんでいることがわかり、社長の家族は、涙を新 たにしたという。
馬のもつ、不思議な能力だと思う。