最近の米軍軍属の起こした沖縄の青年の死亡事故に関する日米地位協定の話をニュースを元に調べてみたところ、非常にこんがらがっていました。日本の報道はわかりにくいです。(アメリカでは一般のニュースにはならなかった。)アメリカ側から法律を調べ始めていたらたぶんもっとシンプルに調べられたように思います。


とにかく、このブログ始まって以来のまじめな法律論をしてみましょう!


報道から事実関係をまとめると、2011年1月沖縄で米軍軍属が仕事帰りに交通事故を起こし、沖縄の青年を死にいたらしめた。沖縄の検察は日米地位協定によりベースから直帰中の軍人と軍属は“公務執行中in the performance of official duty”にあたるから、アメリカに管轄があり、日本側は起訴できないとした。


今までこういう場合のこの結論にあまり疑問を持つ人はいなかった。条文は以下のとおり。http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/fulltext.pdf


17条1(a) 合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。


3 裁判権を行使する権利が[日本とアメリカ軍当局で]競合する場合には、次の規定が適用される。
(a) 合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国軍隊の構成員又は軍属に対して裁判権を行使する第一次の権利を有する。
(ii ) 公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪


ところが、検察審査会は5月に、1960年にアメリカ最高裁が平時に民間人(civilian軍属など)を軍事裁判に服することはできないと判決しているのだから、この軍属は軍法に服さず、ゆえに地位協定からアメリカに専属管轄を導くことはできない、日本が起訴すべき、としました。(井上哲士、公務中の米軍属は裁かれない!?、2011/10/27、http://inoue-satoshi.com/Jmm/magazine/news/242.html


つまり、17条3(a)(ii)が適用されるには裁判権が競合している場合なので、(日本で犯された犯罪に日本の管轄があるのは当然ですが)アメリカの管轄があるというためには罪を犯したとされる人が17条1(a)により軍法に服していなければならないわけです。しかし、平時に軍属に軍法が適用されないということになれば服務中であろうがなかろうが基地の外では米軍は管轄を有しないということです。ということは、日本が裁けるわけです。