私の職場の前のトップだった人のセクハラ訴訟がローカル紙の一面を飾ったことがありました。たぶん、30から50%の女性従業員はセクハラを受けていたと思います。私もその一人だったのですが、私は訴訟に反対はしないですが、参加もしませんでした。「セクハラ大国日本から来た人間にしてみれば、この程度はたいしたこじゃない」と思いました。だからその程度はして良いという意味ではありません。何をされたかというと、外見に関するお世辞、今度二人でどこかへ行きたい発言(具体性はない)、二の腕やウエストなどに手をかけることなどです。「それ以上のことをしてくることはないし、冷たく対応しても不利益を受けることはない」と私は確信していました。訴えでた人の被害内容も似たようなものでした。訴訟はセクハラの公式認定は避けての和解となり、元トップは自主退職しました。
今回、IMFのManaging Director のStrauss-KahnさんがNYで性的暴行容疑で逮捕されました。今回の件の真相は司法手続きで明らかになり、公正に処理されると思います。私はむしろ、彼のgreat seducerという評判、2008年のセクハラ事件で部下と性的関係を持ったことが明らかになったにも関わらず厳しい措置をとってこなかったIMFにあきれ、怒りを感じます。特殊な国際機関とはいえ、ここはアメリカ。そんなことが許されていいわけありません。私の職場の元トップはそんなに大したことしなくても退職に追い込まれたのに。日本の機関だって大手の名のあるところならもっと厳しい処分をするんじゃないですか?(最近の日本のセクハラ事情はわかりませんが。)
Strauss-Kahnさんはご存知のとおりフランス人で、フランスでは偉い人たちの婚外異性関係をあまり問題にしないと言います。しかし、同意のもとでの性的関係だったという認定にせよ(強姦にできないないなら同意があったことになるって程度の意味ですよね)部下に手を出しその部下から苦情が出ることと、本当の同意に基づく愛人やお妾さんの話は全然違うと思います。あるアメリカの記事が、フランスで普段メディアが高官の愛人関係に触れないのは、政治家などを手厚く保護するプライバシー法のほかに、フランスメディアがかなり国家にコントロールされているからであって、フランス人が関心を持たないからじゃない、と分析していました。たとえば、大手新聞社が特殊な企業(一応私企業)に保有されているとか、国の影響力の強い企業(航空会社とか)の宣伝料がメディアの広告収入の半分を占めるとか。そのとおりだと思いました。フランス人だって彼を擁護しないと信じたいです。