日本の文献だけ読んでいると、東京裁判は非常に問題のあるもので、戦勝国側からも反省する意見がみられるというような印象を受けます。ためしにWikipedia日本版で確認してみましたが、そんな感じで書かれています。しかし、アメリカで私が知る限り、それは全く違います。

まず、東京裁判の内容はあまり知られていません。ニュレンベルグ裁判は知られているので、多くの人は東京裁判もニューレンベルグと同じようなものだろうとがけ思っています。ニュレンベルグ裁判については、簡単に言えば、不備はあったにせよ、国際社会が許しがたい行為に対して刑事裁判でもって正義の裁きを与えるための正しいステップだったと思われています。いろいろ批判(戦勝国が敗戦国を裁く構図、事後法)したところで、「じゃ、ニュレンベルグ裁判がなかったほうが正義にかなったというのか?当時、他にどんな明らかにベターな手段があった?」と言われれば、返す言葉はないでしょう。事後法の点についても、ホロコーストしちゃいけないってことは当時でもわかりきったことだろう、と言われて終わりでしょう。国際刑事裁判に関する国際法の集まりでは、しばしばユダヤ人がQ&Aなどで登場し、ニューレンベルグ裁判を讃える前置きを言います。

日本は公式には東京裁判を批判する立場にありません。受け入れたんですからね。しかし、先日引用した日本代表の発言では「事後法で裁いては絶対にいけない」と将来の裁判に関して言うことによって、東京裁判に対する批判を暗に示しているように思えます。(実際にはそんなつもりはないかもしれませんが。)

ところで、中国で数年前に東京裁判という映画がありました。DVDを一度見ただけでうろ覚えではありますが、原爆シーンが最初のほうに出てきて、市民が大量に虐殺されたのは気の毒だが日本軍が外国に与えた被害はそれを大いに上回る、東京裁判は正しかった、中国人も大いに活躍した、というような流れでした。(映画としては、もちろん、もっと人間模様とかドラマが織り込まれています。)