1外傷性頚部症候群の14級9号の後遺障害認定要件とは? 損保料率機構調査事務所は、以下の文書を公表しています。 「外傷性頚部症候群に起因する症状が、神経学的検査所見や画像所見から証明することはできないが、①受傷時の状態や②治療の経過などから③連続性、一貫性が認められ、説明可能な症状であり、④単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの。」 では、これを読み解きます。 ①軽微な物損事故であれば、後遺障害の認定はありません。 受傷時の状態とは、受傷機転、事故発生状況のことを意味しており、それなりの衝撃がないと後遺障害は認めないと言っているのです。私は、車VS車では、物損で30万円以上を想定しています。 いずれにしても、バンパーの交換程度では、後遺障害は認められないということです。 無料相談会では、「物損の修理費用をお教えください?」 いつでも、必ず、確認しています。 もちろん、歩行者や自転車、バイクVS車の衝突では、この限りではありません。 ②頚部痛、頚部の運動制限は、後遺障害に認定される症状ではありません。 また、事故から数カ月を経過して発症したものは、事故によるものではないと判断されます。 治療の経過とは、事故直後から、左右いずれかの頚部、肩、上肢~手指にかけて、重さ感、だるさ感、軽度なしびれ感の神経症状を訴えていることです。 無料相談会では、事故直後からの症状をシッカリと確認しています。 ただし、14級9号であれば、目立ったしびれ感はありません。 そこで、事故直後から、左右いずれかの頚部、肩、上肢~手指にかけて、重さ感、だるさ感、言われてみれば軽度なしびれ感が出現していたか? 症状の受け止め方を拡大して質問しており、ここが、奥の深いところです。 外傷医学においても、全ての症状は、受傷から3カ月以内に出現するとしています。 4カ月目に、当方のHPに到達し、そこから症状を訴えても、もう、相手にはされないのです。 ③真面目なリハビリ通院とは、整形外科・開業医で1カ月に10回以上であると想定しています。 すでに6カ月以上が経過し、この間、整骨院で施術を受けたものは、後遺障害の認定はありません。 施術は、医療類似行為であって、医師の行う治療ではないと判断されているからです。 連続性、一貫性とは、継続的で真面目な通院、1カ月で10回以上でなければなりません。 どんな症状を訴えても、6カ月間で30回程度の通院では、後遺障害の残存は否定されます。 ④賠償志向が強く、発言が過激で症状の訴えが大袈裟など、相手方の保険会社が非常識と判断した被害者では、後遺障害は非該当とされています。 多くは、保険屋さんから弁護士対応とされています。 単なる故意の誇張ではないとは、被害者の常識性と信憑性です。 あまりに大袈裟なもの、通院にタクシーを利用するなどの非常識は、排除されています。 これらをまとめると、 「外傷性頚部症候群に起因する症状が、神経学的検査所見や画像所見などから証明することはできないとしても、痛みやしびれを生じさせるような事故受傷であり、当初から自覚症状があり、その原因を突き止めるために医師の診察・治療を受け、MRIの撮影も受けており、その後も、痛みや痺れが継続していることが通院先や通院実日数から推測ができるところから、事故から現在までを総合して考慮するのであれば、後遺障害として認めるべきであろう。」 調査事務所が、このように判断したときは、14級9号が認定されているのです。 これらの公表されている文書の意味を正しく理解した上で、実務上の認定要件を説明します。 2実務上の後遺障害認定要件とは? 1)MRIの画像所見? 損保料率機構調査事務所は、「外傷性頚部症候群に起因する症状が、神経学的検査所見や画像所見から証明することはできないが?」 このような書き出しをしていますが、実は、MRIで確認できる画像所見は、注目され、重要視されています。 経験則で判断する限り、MRIの画像所見と自覚症状が一致しない限り、非該当とされています。 つまり、頚部神経症状に乏しく、MRIでも、変性が認められないものに、等級の認定はありません。 XPやCTは骨折を確認するためのもの、外傷性頚部症候群では、末梢神経障害が後遺障害の対象ですから、それらが検証できるMRI検査が重視されています。 したがって、頚部・肩~上肢・手指にかけて重さ感、だるさ感、軽度なしびれの症状があるときは、MRIの撮影を受けておかなければなりません。 そして、MRIで注目すべきは、C5/6とC6/7です。 自覚症状に一致するMRI所見が得られるのは、C5/6、6/7であるからです。 また、ここでいうMRI所見とは、外傷性所見ではなく、年齢変性であることが一般的です。 脊椎骨の変性は、18歳頃から始まり、年齢と共に、緩やかに進行していきます。 被害者の年齢が30歳以上であれば、変性が認められて当たり前の状況となっているのです。 脊髄から枝分かれをした末梢神経=神経根、C5/6、6/7は、鞘に包まれた状態で椎間関節から左右の上肢、手指に走行、支配しているのです。 年齢相応の変性は、ゆっくりと進行しており、骨棘や椎間板ヘルニアにより末梢神経の通り道が狭められ、あるいは圧迫されても、末梢神経が、直に、締め付けられているのではなく、末梢神経を包み込んでいる鞘が圧迫を受けて持ちこたえている状況です。 したがって、年齢相応の変性では、重さ感、だるさ感、しびれの症状を発症することはありません。 変性所見のある被害者の頚部に、急激、外来かつ、偶然の交通事故で衝撃が加わると、鞘の圧迫で持ちこたえていた末梢神経そのものが損傷を受けることになります。 これが外傷性頚部症候群、ムチウチの実態なのです。 |