解剖手稿RL19071r_心臓のデッサン | レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの活躍を紹介していきます。

「おお、言葉の書き手よ。君は全ての配置を、この素描ほど完全に描写する言葉を見つけ出せるだろうか?真の知識を持たざるがゆえに、君の叙述は混乱に陥るだろうし、事物の真の形について、わずかな知識しか伝えることが出来ないだろう。」

レオナルド・ダ・ヴィンチの解剖手稿RL19071rには、リアルな心臓のスケッチと共にこのようなメモ書きが残されている。書物(言葉)から得られる知識よりも、視覚的な表現と経験主義を第一とするレオナルドらしいメッセージである。確かに視覚的解説の方が、人体解剖の理解には適している。

レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-解剖手稿RL19071r
解剖手稿RL19071r

1518年までにレオナルドは約30体の人体解剖をしているが、この心臓と肺~気管~動脈のスケッチは人間のものではなく、牛のものである。

15世紀の終わり頃に描かれた「血管の木(肝臓に根を持つ)」というデッサンでは、レオナルドはまだ古典のガレノスや中世のモンディーノの理論から抜け出していないが、晩年のこれらの研究によって心臓に第一の役割を与えていくようになった。

レオナルドは水力学技師として運河の研究もしていたが、これらの知識を心臓の弁や血流についても応用している。


解剖素描の中に「この1510年の春までに、解剖学に関する全ての仕事を仕上げたい。」と記しているが、レオナルドはこの頃パヴィアに滞在しており、伝統あるパヴィア大学の解剖学教室でデッサンを行った。当時の医学生は、レオナルドの様子をこのように記録している。

「彼は医学校で、罪人の死体を解剖するという非人間的で吐き気をもよおす作業に専念した。その目的は、様々な間接や筋肉が自然の法則に基づいて曲がったり伸びたりする様子を絵画に描くことだった。彼は非常に細かい血管や骨の内側にいたるまで、身体のすべての部分を科学的正確さを持って、驚くほど見事に素描することができた。」

ちなみにガリレオ・ガリレイが活躍したパドヴァ大学にも、同様に解剖室があり、近代医学の発展に重要な役割を果たしている。