レオナルドは水面に流れ落ちる水の運動を詳細に記録しており、それらの線は円環を成しつつ互いに絡み合い、自らの渦巻きの輪を作り出す力の線となっている。

ウィンザー素描集_RL12660v 濠の中に落下する水
そして水の運動と良く似た動きは、レオナルドが描く絵画の中の「髪の毛」にも表れる。

受胎告知(ウフィッツィ美術館所蔵)の拡大図
また、レオナルドはプリニウスの博物誌からアンモナイトや巻貝にも興味を示している。
未完となった作品「アンギアーリの戦い」では、戦士の兜や肩あての部分に巻貝を描き、戦士の胸には螺旋状に巻いた牡羊の角と頭蓋骨が描かれている。

アンギアーリの戦い(ルーベンスの模写)の拡大図
古代ローマの博物学者プリニウスは、この不思議な石を手にした時に古代エジプトの太陽神アモンが持つ螺旋状に巻いた牡羊の様の角を連想し、同様の石を総称してアンモーニス・コルヌア、アモンの石と呼んだ。これがアンモナイトの語源だ。アンモナイトの美しい形状には「対数螺旋」や「ベルヌーイ螺旋」と呼ばれる数学的な構造が見られるが、この構造は台風や銀河系の渦、鳥や蜂の軌道、羊の角や象の牙に至るまで、自然界の様々なところで観察される。それらの共通性についてはレオナルドも何らかのインスピレーションが働いていたのかも知れない。
さて、こちらはレオナルドが晩年を過ごしたフランス、ロワール地方にあるシャンボール城。

フランソワ1世に招かれてフランスに移住したレオナルドが設計に関わっていると言われるこの古城にも、実は螺旋が隠されている。それがこの二重螺旋階段。階段を上る人と下る人がすれ違うことがないようにうまく設計されている。

そして、こんなところにも!この有名なヘリコプターの先祖(空気ねじ)は、アルキメデスのネジからヒントを得たという説があるが、実は巻貝の研究からヒントを得たという説もあるらしい。対数螺旋になっているか調べてみなければっ!。
