成りゆきで手に入れた郊外の一軒家で、少女を飼う。

 

今の俺がしていることを端的に表現するとしたら、つまりはそういうことになるんだろうか。

 

正しい道かどうかは知らないが、これも人生の中でのささやかな幸せといえるのかもしれない。

 

 

エマは俺の家でのくらしにもすっかり慣れたらしい。

 

平日は俺が仕事で飛び回っているので、エマのことをほぼ放置してしまっているのだけど、エマは自ら家事をしてくれながら、独自の生活スタイルを確立してくれたようだ。

 

毎日1万歩以上の散歩と、近所のスーパーでの食料の買い出し以外は、エマは基本的には平日も俺の家から外に出ないという。

 

だから、当然ながらエマは俺以外の誰とも会話をすることもないらしい。

 

多感な少女がそんな閉塞的な生活で本当にいいんだろうか…という心配は、もちろん俺にも少しはあったんだが、やっぱりこれでいいんだろうと思い直した。

 

すぐに他人との繋がりを求めるごく普通の人間達と違って、エマの場合は他人と繋がらないほうが精神的にも安定するらしい。

 

それならば、自分の心を壊してまで他人と繋がらなくたっていい。

 

 

今の生活でのエマにとっての一番の楽しみは、週末に俺とたっぷりカラダを重ね合うことだという。

 

平日はなかなか一緒に時間をすごせないぶん、週末になると昼も夜も関係なく、エマは俺にまとわりついてくる。

 

そして、時間の経過も忘れるほど、ふたりでひたすら快感を貪り合う。

 

ココロとカラダが満たされる時間。

 

もし、その間に窓の外で世界が滅亡していたとしても、それでいいとさえ俺は思ってしまう。

 

 

 

 

『You're All I Want』(Cigarettes After Sex)