データ復旧のお仕事をしていると、同じ症例に立て続けに合うことがあります。
いつもは月に1回とかの頻度なのに、同日に3件連続に遭遇しました。流行っているようです。気を付けてください。

今回の症例は、容量偽装 3連発。

症例①
1年前に超有名国内系大手通販サイトで256GBのMicroSDカードを購入した子育て中のお母さん
アンドロイド スマホで運動会の写真・動画を撮影中にエラーが発生。自宅でPCにつないでもダメだった。

症例②
半年前に超有名海外系大手通販サイトで2TBのSSDを購入したビジネスマン
PCからSSD内に新しいデータをコピーしている最中にエラーが発生。「ファイルまたはディレクトリが壊れている」というエラーで別のPCでもSSDを開けなくなった。

症例③
半年前にアジア系超安売り通販サイトで2TBのUSBメモリを購入した専門学校生
PCで授業の映像をUSBメモリにダウンロードしていた最中にエラーが発生。

卒業制作のデータが入っており、深刻。


3症例ともパソコン、スマホ、デジカメなどから読書き可能なメディアとして認識されないか、破損を示すエラーメッセージが出てしまっています。

診断のためドライブのクローンイメージを取得していると、始めから32GB辺りまでは進むのですが、それ以上は超鈍足でしか読込が進まないという共通症状を示しました。
3症例とも、念のため2時間ほどそのままクローンイメージ取得を進めた後、中断。論理解析を行ったところ、程度の差はあるものの論理障害 中度レベル。
ファイルシステムに破損が見られ、記録されいるファイルにも破損しているものが見受けられる状態となりました。

 

3症例とも、32GBまでのデータの90%以上は回収でき、概ね良好な復旧となりました。

 


【容量偽装】
・容量偽装とは、少ない容量のメディアにより大きい容量の表記をして販売しているものです。
メモリ系記録メディアは、大容量も小容量も形状が一緒であるため、50cc原付バイクでも、6000ccのスーパーカーですっという偽造が簡単にできてしまいます。

例えば通販サイトでのタイトル、説明文、本体のシルク印刷、パッケージの写真上は512GBと書かれていますが、実際は32GBのメディアというものです。
この容量偽装品は、ソフトウェア的にも偽装しており、パソコン、スマホ、デジカメからの容量チェックでは偽装容量の512KBと見えるようになっています。
このソフトウェア的な偽装が曲者で、本来の容量の32GB近くまで正常に動作してしまいます。
問題は、データ容量が32GBを超えた時です。
本来の容量が32GBなので当然ながらそれ以上データを入れることができません。でどうなるのか?

単純に壊れます。

偽装元メディアの容量を超えても書き込み動作が継続してしまい、不定のアドレスにデータが書き込みされるようです。それまで記録されていたデータが不規則に上書きされ、データが破損し、ファイルシステムも破壊され、パソコン、スマホ、デジカメなどで、記録ドライブとして認識できなくなります。

厄介なのが、偽装元メディアの32GB近くまで正常に動作するため、容量偽装がバレ難い点です。
32GB という容量は、3MBの写真1万枚以上。なかなか埋まりません。普通の方なら1年以上正常に使えてしまいます。
動画を保存する場合も、発見(破損)は購入の数か月後となってしまいます。

通販サイトから購入した場合、無料返品できる期間までに発覚(破損)することは稀で、商品到着後、一定期間正常に動作してしまうため、良い評価が付いてしまっており、被害者が急増してしまっています。

【容量偽装される製品】
メモリ系の記録メディアには、すべてに容量偽装品があります。。
MicriSDカード、SDカード、USBメモリ、SSD。特に高容量製品には注意が必要です。
2024年初頭に調べた際は、某超有名海外系大手通販サイトで「SDカード 512GB」で検索した結果、
10%は完全な容量偽装品、30%は断定はできないが怪しい製品でした。

【容量偽装されたSSDの中身 症例②の写真】

32GBのMicriSDカードと、それをUSBに接続するカードリーダ部分、そして重量を偽装するためのおもりがSSDの筐体の中に入っています。固定するボンドもいい加減です。

【偽装メディアはどこで売られているか】
国内の大手家電量販店(ヨドバシ、ヤマダ、コジマ、エディオンなど)で販売されている記録メディアは、概ね安全です。各社納入業者を審査し限定しており、商品の検査も独自でやっているようです。
問題は、通販です。
大手通販 アマゾン、楽天、Yahooすべて、よく販売製品の情報を調べて見ないと危ないです。
偽装業者は、そのやり口が巧妙となっており、どんどん判別が難しくなっています。

海外の通販サイトで、高容量のメモリ系記録メディアの購入は避けたほうが無難です。


【偽装メディアを見抜くコツ】
・価格?

以前は、相場価格からかけ離れた価格のものが多く判別が簡単でしたが、相場価格が下がったSDカード類は、256GB、512GBあたりは、ほとんど価格では判別できなくなってきています。

価格では見抜けません。

 

・容量?
以前は、その時の技術では到底不可能な高容量のメモリが低価格で売られていることがあり、とても分かりやすかったのですが、2024年現在、技術が追いついて1TBのMicroSDカード、2TBのSSDなど本物が存在しており判別が難しくなっています。

容量でも見抜くことが難しくなっています。

 

・メーカー?
通販サイト上の製品に書かれているメーカー名やロゴ、仕様の表記は、あまり信用できません。偽装業者は、製品パッケージも独自で作成しているのでメーカー品に偽装することも簡単です。

メーカーも偽装されます。

 

・評価?

製品の評価は、良い指標です。数件、数十しか評価がない製品は避けて、数百、数千の評価が投稿されていていて、1評価の割合が少ないものならOKの可能性が高いです。


・販売業者?
大手通販サイトに登録されている販売業者を確認します。
大手通販サイトの販売業者登録は、日本国内ではかなり厳密にされており、代表者の本人確認などもあります。しかし、海外で登録された販売業者もあり、怪しい業者がまぎれています。
ブラジルで販売されていた健康食品の商品IDをそのままに、日本国内でSSDを売っているなんて、笑えない状態もあります。口コミがポルトガル語で「おいしくて長く続けられ、とってもヘルシー」ってどんなSSDなんだよって感じ。

販売業者自身も容量偽装を認識していないケースもあるようです。海外で調達した格安商品を単に輸入して販売しており、動作検証もしていない。その業者が販売している他の商品を確認すると記録メディア以外の生活雑貨などを主に販売しているということがあります。


販売業者の所在地、代表者を確認しましょう。
所在地が日本国内で かつ 代表者名が日本人であることを確認します。

所在地が外国、代表者名が外国人の場合、避けたほうが無難です。


販売業者の発送元住所を確認しましょう。

発送元住所が、日本国内であることを確認します。

発送元住所が、外国の場合、避けたほうが無難です。

 

実際の偽装製品の販売ページ(Amazon)

 

販売業者名がメーカーそのものの直販ページなら安心です。

海外大手、国内大手のメモリ系記録メディア メーカーであることを確認しましょう。

トランセンド、サムソン、サンディスク、バッファロー、エレコム、アイ・オー・データなど

 

実際の良製品の販売ページ(Amazonのエレコム・バッファローの製品)