厚底シューズと腕振り ~箱根駅伝2022を見て~
皆さんこんにちは。
酒井根走遊会です。
1月2日・3日は新年恒例の箱根駅伝でした。
今年は2区の途中からと、最終10区のみ断続的に見たのですが、気になる点が一つありました。
① 腕振り
多くの選手が、
・ 肘の角度が大きくさらに腕を大きく振る
・ 肘の角度は90度くらいで横に振る
・ 回すように振る
というランニングフォームが見られました。
一言でいうと、“腕振りが大きい”、という点が気になりました。
② 厚底シューズとストライド
この特徴的な“腕振り“はおそらく厚底シューズの影響を受けているため、と私は考えました。
厚底シューズでは、多くの選手のストライドが伸びることが報告されています。
さらに、“反発”があり、“沈み込み”もあるという感覚をほとんどの選手が体感しています。
・ 沈み込む
・ 反発する
・ ストライドが伸びる
というポイントから、肘を折りたたんでコンパクトな腕振りではタイミングが合わないのではないか、と私は考えました。
大きなストライド・沈み込み・反発して跳ねる…
という繰り返しの動作と、それを60分ほど維持するゆったりとした動きのバランス・リズムをとるために、“大きな腕振り“もしくは”横に逃がす腕振り“という傾向がみられるのではないかと思います。
③ ストライドとピッチ
箱根駅伝のような“高速でない種目”では“大きな腕振り“・”横に振る腕振り“でゆったりとしたタイミングに合わせることは、ゆとりのあるリズムとテンポを刻んでいくうえでとても有効であると思います。
対して1500mといった中距離のレースでは、“大きなストライド”に加えて“速いピッチ”が必要になってきます。
男子の世界トップレベルの中距離選手は“大きなストライド”であるとともに“速いピッチ”をスムースに維持するために
肘を折りたたみ、前後にシャープに振る、“コンパクトな腕振り”をしている選手がほとんどです。
女子のトップ選手では大きく弾んで、あまりピッチの速くない4分前後の選手では腕を大きく回すような選手もいますが、男子ではほとんどがシャープで“コンパクトな腕振り”をしています。
(800mでは、Nijel Amos選手のような独特な腕振りの選手もいますが、各選手のバイオメカニクスによって必ず同じとはいきません。また800mでは、中盤のスピード維持区間で大きなストライドと速いピッチを持続させ、終盤にはピッチ速度が維持できなくなると腕振りが開いてくるという競技特性も関係しているように思います。
1500mでは、中盤に大きいストライドを維持することに変わりはありませんが、終盤では”小さく・速く”というイメージでスピードを維持する選手が多いです。ストライドの大きさとピッチの不均衡が生じ、接地時のブレーキをなくすためかと思われます。)
Athletics | Men's 1500m Final | Olympic Games Tokyo 2020 | Sky Sport NZ - YouTube
④ 厚底シューズとトレーニング
先日、私の友人が”Nike Dragonfly”のスパイクで練習していましたが、感想を聞くと
“鋭い反発がかえって来るところがいい”
と言っていました。
その選手は、TempoやUp‐Tempoのワークアウトで“Asics Meta Speed“ を履いています。
私が“Asics Meta Speed“でトラックのワークアウトはしないのか尋ねたところ、
『このシューズは反発はあって2分40秒くらいで走れることはできるけど、沈み込みすぎて接地が長くなって、トラックを走るときのリズムに合わなくなる。だから鋭い反発が返ってくるスパイクを履かないとトラックのワークアウトの意味がなくなると思う。』
と話していました。
1500m・5000mをメイン種目とする選手では、
“トラックのリズムとフォーム“
”最後に仕掛ける瞬間の瞬間的なパワー”
キックで得た速さを最大下スピードで維持する、“スムースでダイナミックな動き“
これらをトレーニングしていくには、やはり厚底シューズでは求める速さに対応できないのでしょう。
⑤ 最適化
トレーニングの本質と方向性というのは、目標とする種目で最高のパフォーマンスを発揮するために行います。
そのため、”箱根駅伝”のためのトレーニングを積んでいけば、そこで発揮されるべき動きと負荷をトレーニングで体に与えて能力をとがらせていきます。
”1500m”のためのトレーニングを積んでいけば、”4分以内”で終わってしまう種目で力を出し切る動きと負荷を最終的に完成させます。
そうした適応がトレーニングによって顕著になっていくために、最終的に”目標とする大会”では同じような動きが多くみられるようになります。
その中の助力として、もしくは妨げにならないような”シューズ選び”や”感覚”を大事にできると、よいトレーニングを積んでいけることと思います。
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今回の記事では、今年の箱根駅伝で気になった“大きな腕振り“について私の見解を書いてみました。
ご指摘や異なる考察がありましたら、ぜひコメントでお寄せいただけると有難いです。