映画ウッドジョブで有名な神去なあなあ村にある坂本小屋にあまご料理を食べに行きました。離れはエアコンがありません。深い森の中なので木々の葉っぱの蒸散作用で涼しげ。
窓からはシャクナゲが見えます。花の時期に来たら真緑の中に薄紅の花が見られることでしょう。まだアジサイが咲いているので、気温の違いが分かります。その分湿気はかなりのもの。それでも湿っぽさと言うよりも、涼しさが勝ります。
あまごのコース料理をお願いしました。5500円、ミシュランに登録されたお店のコースってどんなのメニューなのか。最初に出たのは、煮物です。ワラビや椎茸の山菜の香りが部屋に漂います。地物なので、香りが強い。
稚魚の酢の物。なぜこんな贅沢ができるのでしょう。敷地内にはアマゴの卵から育てる養殖場があります。だからなせる技。
アマゴ料理ではやはり甘露煮。頭から全部食べられます。味は濃いのでこれでご飯一杯はいただけそう。
稚魚の唐揚げです。夏だからできるメニューなのでしょう。柔らかくて全部食べられます。
これは成魚の唐揚げ。稚魚のお味と比べると味は濃いかも。
まさかあまごのお寿司が出るとは。サーモントラウトのような風味です。遺伝的にはサーモンなのでただ川を住み処とするか、海を住み処とするかの違いだけ。美味しい。
やはりメインは塩焼きです。炭火が強いのですが、熱さを感じません。本当に夏なのかと思います。それでも今日の気温は30℃は超えています。ついさきほどまで泳いでいたので、内臓をとってもピクピクと動きます。
これはあまごを朴葉でお味噌で味付けして蒸し焼きにした物です。お塩やお醤油、そしてお味噌。調味料によって全く食感もお味も変化します。あまごでこんなにも多彩な食べ方ができるでしょうか。お味噌で蒸すという調理法はさらに不思議な世界でした。
最後は吸い物とあまごご飯です。お漬物も自家製。
坂本小屋ですが、秘境にあります。地図で示しても地元の人しか行き着かないでしょう。ここのアマゴ料理は孤高のお味です。他のお店を追随させません。お料理はシンプル。なのに美味しい。それはアマゴ本来のお味を邪魔しないからです。あまごはもともと美味しいのでしょう。ただ、それを最大限引き出しているだけ。
ミシュランは、お料理だけでなくそのお店の丁度や料理人まで評価します。そして、一度登録されると多くの人が殺到します。しかし、ここはいたって静か。塩焼きは一部別注しましたが、このコース料理で5500円です。何とも心豊かな気持ちになれる空間です。
今日は平日なのか私たち一組で貸切状態でした。心の豊かさはこんな所にあるのでしょう。それにしても卵からここまで育てるにはどんな手間が掛かっているのでしょう。帰りに生け簀を見ました。あまごが元気に泳いでいます。冬にはお鍋が美味しいらしい。冬に着たら雪に閉ざされているかもしれません。そんな寒々として離れで炭火の上のぐつぐつ煮えたお鍋を想像していました。
神去なあなあ村の時間は、下界とは流れの速さが違っているように思われました。坦々と流れる時間、流れると言うよりも止まっているようにも思えました。ここに来ると何が豊かさなのか、少し分かった気がします。
映画ウッドジョブではお婆さんがたばこを吸って麻雀をしています。マムシを足で捕まえて、皮をむいて食べます。今でもマムシは強壮剤として使われているようです。
紀伊半島の中部、雲出川の源流坂本川。緑の秘境には素晴らしい自然が残っています。その中で清流を泳ぐあまご。素晴らしい食材です。あまごは閉ざされた清流で生きることを選びました。サーモンは海で回遊して生きることを選びました。そして、私たちは多彩な食材を手に入れて楽しんでいます。
松阪駅から名松線に乗って、終点興津駅から車で一時間ほど。もう民家はなさそうという所にあります。それでもあなたはここまで来て、アマゴのお料理を食べに来たいと思いますか。答えは、それでもここに来たいです。そう思わせるのはミシュランの証。
注記 大きい方の塩焼き、大きい方の唐揚げ、朴葉味噌蒸しは5500円のコース料理とは別注です。
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