午前4:15。月齢26.2の有明の月が出た。その右にはサソリ座が見える。厳寒の空に夏の星座、それをとり巻く星雲はいつのまにか消えてゆき、薄明が始まった。闇は限りなく透明になり、星雲は静かに消え、アンタレスも消えていく。
山深い稜線の下から昇ってくる有明月。小枝の向こうに37万キロの月影。火星大の小惑星が地球に近づいていた。そして、衝突した。二つの惑星は火球となり一つは地球に、もう一つは月となった。その端くれが山の端から顔を出す。今でも月は地球から年3センチの距離で遠ざかっている。凸レンズの目を持った生命達は、この月をもっと間近で見ていただろう。
ついさっきまで凍って微動だにしなかった空気が流れ始めた。空気の粒は、月の影をゆがませる。月のクレーターが流れては元に戻る。まだ昇っていない太陽の仕業だ。東の空が橙に焼けだ。
小枝の上にクレーターが見える不思議な光景。有明月の影の弧は私たちが住む地球。目をこらしていると地球照が見える。