すでにD象限になっているチームは、そのまま崩壊するだけなので、今回は扱いませんが、多くの部活動で陥るのはC象限の状態です。
優秀な選手をスカウティングや推薦などで獲得し続けているチームでさえ、たびたび陥ってしまうぐらいですから、様々な能力、モチベーションの生徒が毎年入れ替わり立ち替わり入部してくる一般の高校では、C象限の状態に陥ることがたびたびあります。
やはり、人は、どうしても「易きに流れる」からです。
それを食い止めるために、一番の基本になるのは、前回に書いた「目標の設定」です。
「勝ちたい」というだけではダメです。
前回もいったように、勝ち続けているチームでも、
「このままではダメだ。もっと練習を積まないといけない」
と問題提起をする選手がいたと思えば、負け続けていても、
「大丈夫。結果は悪かったけど、内容は良かった」
と楽観的に考えられる選手もいる。
ですので、目標の設定と同時に、その目標を実現するための問題点を共有する、ということも大事になるわけです。
そのためには、プレイを常に客観的に分析し、それぞれの選手の能力を把握し、チーム全体の目標を個人個人の目標にまで落とし込む。
たとえば「県でベスト4に入ろう」というチームの目標を実現するために、
「○○君は、サーブをもっと強化しないとダメだな」
とか、
「□□さんと△△さんのフォーメーションをもっとしっかりしないと、上にはいけないぞ」
とかのように。
ですから、普段の練習や試合を、結果だけでなく内容も含めてしっかりと分析し続ける必要があるのです。
もちろん、このチームの目標は「楽しくやる」でも全然かまわない。
「勝つ」ということを、全国、全てのチームが目標にする必要は無いのです。
その場合、チームの状態がC象限にとどまったままでもOK、ということになります。
おそらく「楽しくやる」という目標を掲げる選手たちは、そもそも「目標を共有し、実現するために、意見を交換する」必要が薄まりますし、目標の達成そのものが容易であるため、簡単に意見交換ができる──つまり、意見が衝突するような状態になりにくいからです。
ただ、部活動を教育活動の一つ、として捉えたとき「達成困難な目標を掲げた上で、A象限を目指す」ということが、高校生にとっては、すごく貴重な経験のように思えるのです。
もちろん、そういう経験は部活動でのみ得られるわけではないので、その他の学習活動や文化活動で、そういう経験ができれば、それはそれでよいと思います。
逆に言えば、だからこそ、そういう経験をしたいわけじゃないなら、そもそも部活動なんか入らなくてもいいんじゃない?って思ってしまう。
グループに入っておいて「一生懸命やりたい」っていう選手の足を引っ張って、自分の居心地のために、チームをあえてC象限にとどまらせようとするやつが、僕は大っ嫌いなのです。
【次回へ続く】