SAQトレーニングは、書籍も多く出ていますし、YouTubeでも多く取り上げられています。

 

「S」だけ、「Q」だけ、「A」だけを鍛えるトレーニング、なんていうのはなかなかありませんし、また「SAQ」のどれかを鍛えれば大丈夫、というものではないので、全体的なバランスを考え、自分に必要な(現在不足している)能力として、どれを「重点的に」トレーニングするか考えないといけません

 

 ただ、このとき、進学校の公立高校での部活動で、このトレーニングを日常的に取り入れられるか、というとなかなか難しい

 

 やるのならば、しっかりと時間を確保して行わなければ意味がないのですが、この時間がなかなか取れません。

 

 平日の授業終わりの1時間半〜2時間の間にできること、やるべきことは限られてきます。

 

 よく、

 

「こういうフィジカルトレーニングにしっかりと時間をかけるべきだ」

 

 と言わますし、そんなことは重々承知の上で(笑)、普段の練習メニューに本格的に取り入れることはなかなか難しいのです。

 

 それでも、

 

「フィジカルが衰えているやつが、いくらテニスを練習してもうまくならない」

 

 って怒られちゃうんですが(笑)。

 

 実際、大人相手のテニススクールで、

 

「テニスがうまくなるには、こういう能力が必要です!」

 

 って言って、ボールも打たせず、何十分もかけてラダートレーニングをやらされたら、たぶん、文句が出ますよね?(笑)

 

 それと感覚的には同じです。

 

 生徒に、うまくなってほしい、と思う気持ちと同時に、ボールを打つ練習のほうが圧倒的に楽しいことが分かっていますから。

 

 あくまでも「バランス」ということです

 

「SAQトレーニング」などは、やるとしても、雨の日や冬場のトレーニングで集中的に行ったり、オフシーズンや試合まで余裕のあるときに取り組めるぐらいでしょうか。

 

 生徒自身に、自分でやっておけ、と言ってもなかなか難しいですから。

 

 ですので、普段の球出しの練習などに、SAQを鍛えられるようなメニューをいれなければいけません

 

 いわゆる「振り回し」を代表とするような、SpeedとQuicknessを必要とする球出しをメニューに組み込みます。

 

 それは、激しく動くものだけではありません

 

 ゆっくりとした球出しでも、フットワークの習得を重視して行うことで、結果、スピーディーな動きを実現できるようになります

 

 ただ、多くの球出し練習の場合、「正しく打つこと」を意識しすぎているため、タイミングを合わせることだけに執着してしまいます

 

 そのため、ゆっくりの球出しだからと、サイドステップだけで移動してしまうクセがついてしまうのです。

 

 テニススクールでの球出しを繰り返している人たちに多い症状ですし、テニス系YouTubeで個人レッスンなどを受けている人なんかにも多くいます

 

 また、球出しの場合、右に来る、左に来る、というのがあらかじめ分かってしまっている──つまり予定調和が非常に高い状態なので、スタート時点の動きも適当になってしまいます。

 

 球出しにタイミングにちゃんと合わせて、正しい動き出しをすることを徹底すると、動きそのものはゆっくりでも、しっかりとフットワークの練習になり、QuicknessやSpeedのトレーニングにつながっていきます。

 

 そういうフットワークをしっかりと理解した上で、今度は大きな動き、速い動きを必要とする振り回しや実戦的なラリーを行い、体で覚えたフットワークを流れの中でも再現する練習を繰り返す、というのが理想です。

 

 その上で、実際のSAQトレーニングに取り組むことができれば、なお良い。

 

 ただ、前回にもお話ししていますが、テニスコートは個人競技としてはかなり大きいものですが、それでも実際の1ショット1ショットで、常にコートの端から端まで走り続ける必要がある、ということにはなりません。

 

「Quickness」についても、動き出しそのものの「力強さ」よりも、相手ショットの見極めや自分のショットの選択、距離感の決定によるところが大きいですし、「Speed」もダッシュ力そのものと同じぐらいフットワークが重要です。

 

 もちろん「全国で勝ち抜く!」という場合には、圧倒的な筋力が必要になりますが、それでもまずは基本的なフットワークやステップが必要になるわけで、普段のラリーや試合形式に、そういうことを意識した練習にするのが優先ではないかな、と思います。

 

 ぜひ、自分にあったSAQトレーニングを見つけて、取り組んでみてください。