テニスを指導する上で、筋力トレーニングを論じるときには、かなり注意をしなければいけません。

 

 それは、筋力トレーニングに多くの誤解や偏見があり、科学的に間違った理論がいまだに横行していることです。

 

 たとえば、そもそも筋力トレーニングを反対している人の多くは(僕の周りにも、ネットにも大量にいますが)、筋力トレーニングを科学的に論じている論文や書籍をそもそも読んでいない

 

 興味が無いからしょうがないといえばそれまでなんですが、テニスを見たことがないのに、またはテニスをやったこともないのに、テニスを嫌い、って言われても困るのと同じなんだ、という論法が、そういう人たちには通じません(笑)

 

 そういう人たちのテニス理論を聞くと、筋力が極端にないために、体の使い方がかえって非効率的で強引なものになっていることも多いわけです。

 

 オープンスタンスが「えせオープンスタンス」になっていたり、サーブのラケットダウンで「ラケットを重力の力を使って円運動させよう」みたいなことを言い出したり(笑)。

 

  逆に筋力トレーニング推奨派の人たちの中にも、間違ったトレーニング理論を持っている人、または全体的に勉強不足な人が多くて、それはそれで困るのです。

 

 さらに一番やっかいなことは、多くの人が自分の経験だけをもとに話していることがほとんどだ、ということです。

 

 人それぞれ、年齢も違えばテニス歴も違います。

 

 プレイスタイルも違えば、目指しているところも違う。

 

 ましてや人それぞれ、筋力が違うわけです。

 

 これを一緒くたにして論じられても困る(笑)。

 

 筋力がいらない、というか、そもそも筋力を論じるに値しないテニス理論のかっこ悪いフォームのおじさんが、

 

「テニスには筋力は必要ない!」

 

 ってほざいたって、だれも信じないわけですから。

 

 たとえば、こういう理論がよくあります。

 

「筋力がない体の小さいジュニアプレイヤーでも、強いショットを打てるのだから、テニスには筋力は必要ない」

 

 というものです。

 

 これは、前半は正しくて、後半は間違っているのです。

 

「筋力がない体の小さいジュニアプレイヤーでも、強いショットを打てる」というのはホント。

 

 ただ、この事実が示しているのは、

 

「正しいフォームでショットを打てば、弱い筋力でもこれぐらい強いショットが打てる」

 

 ということに過ぎません。

 

「そんなに筋力があって、そのスピードのボールしか打てないのは、体の使い方がまだまだ甘いですよ」

 

 ということでしかないのです。

 

「テニスに筋力は必要ない」という結論を結びつけるには、論法としてかなり強引な飛躍があることに、言っている本人が気づいていないのです。

 

 現に、その筋力がない小さいジュニアプレイヤーが、高校生になって筋力がつけば、確実にショットのスピードがあがるのですから(笑)。

 

 ということはやっぱり、筋力がつくとショットが速くなるんじゃん!ってことになるのですが、こういう理論を言う人にはそういう発想はできないのです。

 

 逆に、筋力を付けるだけでショットのスピードがあがる、なんていうのも違います

 

 先ほども言ったとおり、ショットの良し悪し、というものは、体の使い方が重要な部分が多分にあるからです。

 

 筋力の付け方によっては、関節の可動域や、動きの連動性にも大きく影響を与えます。

 

 筋力によって脚力が上がったとしても、体重自体も重くなりますから、瞬発力や持久力に大きく影響がでる。

 

 筋力が1.2倍になっても、体重が1.3倍になったら意味が無い(笑)。

 

 少しでも持久力的な運動をすると、筋分解が進む、と言われているので、テニスの練習をすればするほど、筋増強と筋分解がどこかで釣り合うことになります。

 

 陸上競技の選手や、持久力の必要な球技のプレイヤーにボディービルダーのような体つきの人がいないのはそういう理由です。

 

 決して「筋肉が必要ない」わけじゃない。

 

 あくまでも「バランス」なのです。

 

 以前「正しい筋トレ」シリーズという記事を書いたことがありますが、今回は自分のチームで行っている具体的な筋トレを例に挙げながら、テニスに必要な筋トレについて考えていきたいと思います。

 

【次回へ続く】