4.小さすぎるフォロースルー
これもサーブのヒジを曲げることと似ているのですが、今回のはストロークについてです。
最初にお断りをしておきます。
ボールの軌道や回転数は、全てラケットによるインパクトの4/1000~5/1000秒の間で全て決まります。
本来ならばフォロースルーもテイクバックも、ボールの軌道や回転数には全く寄与しない。
インパクトがメチャメチャなのに、テイクバックやフォロースルーの形を整えたところで意味が無いのです。
だからこそ、サーブでインパクトの後にヒジを曲げてラケットヘッドを加速させる、という考え方に疑問を持つわけです(笑)
が!
全てのフォロースルーは全く関係ない、というのはあくまでも理論上のことです。
実際の指導で、テイクバックやフォロースルーの形に無頓着なコーチはいません。
インパクトがメチャメチャなのに、テイクバックやフォロースルーの形を整えたところで意味が無い、という以上に「テイクバックやフォロースルーがめちゃくちゃなのに、インパクトだけが良い」なんてこともないからです。
なんと言ってもテイクバックはインパクトに向けての準備ですし、フォロースルーはそのインパクトの結果、ですから、それぞれの形が整っていけば、自然とインパクトも整ってくることになる。
そういう意味で、小さすぎるフォロースルーは、インパクトに影響しやすいのではないか、と思うのです。
サーブとの圧倒的な違いは、腕の可動の自由度が圧倒的に高いことです。
つまり、へんなフォームにもなりやすい。
テイクバックを普通にとったうえで、フォロースルーが極端に小さくなると、ラケットの軌道がどうしてもアウト→インの動きになってしまいます。
右利きフォアハンドの場合、右後ろから左前(しかもすごく手前)への軌道になりがちで、そのままボールに当たると、左前方に飛んでいってしまう、ということです。
そのアウト→イン(右後ろ→左手前)のラケット軌道で、それでもボールを「前」に飛ばす方法は2つ。
1つは、上体を回転させながらだと「右後ろ→左前」の斜め方向になってしまうラケットの軌道を、上体の回転を抑えることで、強引に「後ろ→前」になるようにすることです。
しかし、そうすると、ラケットスピードは遅くなり、いわゆる「手打ち」になります。
もう1つは、グリップエンドからラケットを出し、ぎりぎりまでラケットを立てない。
本来、トップスピンを打つには、ラケット面を下→上方向に振り上げなければなりません。
腕の振り上げだけでなく、腕の「内旋+回内」によってラケットを「立てる」ようにすることで、ラケット面が自然と下~上方向に振り上げられることになる。
その典型的な振り上げ方が、ワイパースウィングなのです。
しかし、この「内旋+回内」は、いわゆる回転運動なので、ラケット面が下→上方向に振り上げられると同時に、外→内方向、つまり右~左への動きも加わってしまいます。
ラケット軌道が右後ろ→左前になっている上、「内旋+回内」の運動が加わってしまうと、ますますボールは左方向に飛んでいってしまいます。
そのため、ラケット面を右方向に開いたままインパクトを迎えることで、ラケット面とボールの反発面と、ラケットがボールに加えるインパクトの合力が、前方に向くようにするしかありません。
その結果、ぎりぎりまでグリップエンドから出すようなスウィングになります。
ラケットを持つ手が、上体の正面を通り過ぎようとするときにまだ、ラケットヘッドが寝ているようなスウィングに見えてしまうわけです。
スウィング軌道がアウト→インだと、トップスピンがかからない、という理由は、これが大きいと思います。
ラケット面を開こうと思うと、ワイパースウィングのようなラケットワークができず、またもしもできたとしても、左方向への引っ張りが強すぎて横回転が強くなってしまうからです。
よく技術本などでは、ラケットのグリップエンドから出すようなスウィングが推奨されます。
適度な伸張反射を生み出し、回内+内旋によるトップスピンをかける原動力になるからです。
が、そのグリップエンドから振り出すスウィングの「意味」を分かっていないと──ラケットヘッドを立ててトップスピンをかける「準備」でしかないのだ、ということを分かっていないと、非常に窮屈なフォームになりますから、注意してください。
特に、ソフトテニス経験者はテイクバックが、脇を空けるほどに大きく、フォロースルーがそれほど小さくなくても、ラケット軌道が「アウト→イン」になりがちです。
そしてそのフォームがクセになっているために、テイクバックだけを小さくしても、ラケットを立てる打ち方がなかなかできない、という人がいます。
そういう人は、フォロースルーの形を意識して見てくださいね。
【次回へ続く】