練習試合の相手を決めるのには、非常に気を遣います。
 
 まあ、僕自身が人見知りなので、他の顧問の先生にお願いするのが苦手、というのも大きいですし(笑)、うちのような弱小チームの場合、相手を選ぶなんていう贅沢そもそもが許されませんので、偉そうなことは言えないのですが。
 
 僕の方針として、基本的に日程さえ合えば、向こうからお願いされた練習試合は全てお受けする形にしています。
 
 ここ1,2年間のチームは、良い成績を残している上に、しかも「ほど良い手応えがある」と思われているらしく(笑)、練習試合のお誘いが非常に多い世代でした。
 
 僕としては、今の3年生が抜けると、チーム力としてはかなり低下することを覚悟していますし、そのときに、こちらから練習試合をお願いに回る立場になることが必定です(笑)。
 
 今、依頼された練習試合を全てお受けする代わりに「春季総体以降、うちが弱くなっても練習試合してくださいね」ってことで(笑)、お話をいただいた練習試合は、全てさせていただいています。
 
 持ちつ持たれつ。
 
 うちの県の顧問の先生方は非常に優しい方々ばかりなので、「お互い様」と思ってくださるところがありがたいです。
 
 さて、そういう裏事情は置いておいて。
 
 いざ、自分から練習試合の相手を探すとき、人間関係や派閥などのしがらみがなければ、考えることは一つ。
 
「有意義な練習試合にしたい」
 
 ということです。
 
 選手数にもよりますが、選手の体力などを考慮しながら、そして確保できるコート数にも限度がありますので、1日での試合数には限りがあります。
 
 9時から16時ぐらいまで3コートを借りたとして、4ゲーム先取などの変則ルールで回したとしても1コートにつき12試合ほど。
 
 3コート全部で40試合できれば上等です。
 
 自チームの選手が8人ぐらい居ると、シングルスでも5試合が限度。
 
 ダブルスを混ぜたとしても1人7~8試合程度でしょうか。
 
 1つ1つの試合の本気度を高めるためにフルゲームの1セットマッチを行うと、試合数はぐっと少なくなりますし、選手数が3,4人増えるだけで、さらに1人当たりの試合数は極端に少なくなります。
 
 したがって、ただただダラダラした練習試合をやるぐらいならば、コートで球出しの基本練習をしたり、緊張感のある部内戦のほうが「有意義」な場合も出てきてしまうのです。
 
 だからこそ、相手選びには慎重になるわけです。
 
 そこで、顧問の性格がでます。
 
 ある先生は、常にいわゆる「強豪」と呼ばれる相手としかしません。
 
 もちろん、歯が立たず、ボロ負けすることが多いのですが、それでこそ「有意義」と判断されているわけです。
 
 中には「強豪」と呼ばれる相手と練習試合をしさえすれば上手くなると勘違いしている顧問もいます(笑)。
 
「強豪」と練習試合をするだけで、自分も「強豪」の仲間入りをした気になれるのかも知れませんね。
 
 僕は、あまりにも実力差がある相手とやっても意味が無い、と思っていて、勝ったり負けたりできるようなチームにお願いすることが多い。
 
 前出の先生のように、強すぎる相手にぼろぼろに負け続ける、ということで生徒の意識改革を図ったり、負けん気を喚起したり、という手法もあるとは思うのですが、僕としてはこれまでの練習成果を試すところ、という意識でやってもらいたいので、
 
「自分らしいプレイができないまま終わった」
 
 というのが続いてしまうのでは困ってしまいます。
 
「負け試合」を糧にすることが大切なのは重々分かっているのですが、それもあまりに一方的であったり、あまりに多すぎたりすると、ただただ自信の喪失と苦手意識の増大にしかつながらないのです。
 
 また逆に、相手チームの選手の実力が低すぎて何の「手応え」もなく、全員が何の苦労もなく「6-0」や「4-0(4ゲーム先取の場合)」で勝ち続けるような練習試合ならば、よほど部内戦のほうが有意義になってしまいます。
 
「勝てば良し」
 
 というわけでもないわけです。
 
 自信もつくけれど、課題も見つかる、というのが理想です(笑)
 
 しかも、それはチーム全員がそうなることが理想です。
 
 チームの中に1人でも有力な選手がエースとしていたりすると、どうしてもその選手の実力、レベルに合わせて練習試合を組むことになるため、「強豪校」との練習試合が多くなります。
 
 チーム力がまとまっている──全員がその有力選手に肉薄できるような実力ならばよいのですが、一般の公立高校ではそんなこともまれ。
 
 エースは強豪校相手に良い試合をして課題も見つかるけれど、他の部員は負けっ放しで顧問にも怒られっぱなし、という状況になってしまうのです。
 
 あまりに一方的な負け試合では、敗因が「実力不足」というだけの分析にしかならないことも多いからです。
 
 そこらへんを突き詰めていってしまうと、各局、練習試合に連れて行く選手の「選抜」が始まってしまう。
 
 もちろん、コート数も時間も有限ですし、移動手段や費用のことも考えると全員は連れていけないことが多くあります。
 
 しかも強豪校相手に「有意義」な練習試合になるためには、実力が高い選手でなければならないからです。
 
 あまりに実力が低い選手を連れて行くと、向こうの強豪校の選手に失礼になってしまうことも多い。
 
 先ほど言った「6-0」の試合が続いてしまい、向こうの選手にとって「有意義」なものにならないからです。
 
 ただ、これを繰り返すと、実力の低い選手は練習試合の経験も少なく、試合にも出られず、ますますチームメイトとの実力差が開いてしまうことになるのです。
 
 ですから、僕は、あまり「強豪校」との練習試合を好んでは組みません。
 
 うちのチームと同じぐらいの実力か、ちょっと高い、またはちょっと低い、ぐらいのところです。
 
 向こうにとってもこちらにとっても「有意義」な練習試合にしやすいからです。
 
 だからこそ、練習試合の組み方には慎重になります。
 
 また、コート数や時間の関係で生徒を「選抜」しなければいけないときには「学年」で分けます。
 
 上級生を優先して連れて行き、実力差で分けることはしません。
 
 少なくとも、上級生と下級生の一部を入れ替えて連れて行く、ということはない。
 
 逆に「実力」で選抜しなければいけないような練習試合は極力組まない、ということです。
 
 同学年の選手間でも実力差はもちろんありますから、相手チームの顧問にお願いして、僕のほうでオーダーを組ませてもらい、おたがいのチームの選手の実力が似ているもの同士でできるだけ対戦するように組みます。
 
 いや、まあ、全国大会やブロック大会出場を常に目的にしたチームであれば、そんな甘いチーム運営は御法度だと思います(笑)。
 
 が、僕は、チームのエース選手の育成と同じぐらい、全員の実力の底上げのほうが、部活動運営としては大事だと思うのです。
 
 チーム内では実力が低い選手でも、ジュニア大会などの個人参加ができる試合では、しっかりと1,2回戦を突破できる、またはチームメイトと切磋琢磨して練習試合も多く参加できた、というのが大事だと思うのです。
 
 そういうこともあって、うちのチームでは、新入生についても積極的な勧誘をあまりしません。
 
 人数的には1学年で6人ぐらいがちょうど良い。
 
 そのかわり、来るものは拒まず。
 
 中学校の時には吹奏楽部や帰宅部だった、なんて生徒もよく入ってきます。
 
 最初の頃なんか、腕立て伏せがまともに5回もできない生徒ばっかりですし(笑)。
 
 だからこそ、実力差がついてきたとしても、同じ学年のチームメイトが一緒に成長していく雰囲気を大切にしてほしいなぁ、と思うのです。
 
 そういう事情もあり、僕は、県外の高校に飛び込みで練習試合をお願いする、ということをしません。
 
 まあ、僕自身が人見知りなので(笑)、やろうと思ってもできないでしょうが、それよりも実力の分からない高校相手の練習試合を「有意義」なものにする自信がないのです。
 
 様々な県でも、高体連の事務局が各種大会の結果をHPで公開していたり、各県のテニス協会がジュニアランキングを発表していますから「強いチーム」はわかりやすい。
 
 ですが、自分のチームに「ちょうど良い」チームを探すのは非常に困難だからです。
 
 昔、別の運動部の顧問をしていたときに、知り合いの先生から、
 
「○○高校がすごく強くてさ。
 
 練習試合したら、きっと良い経験になると思うんだ。
 
 あんな強い相手とできることなんてめったにない経験だぞ。
 
(君は経験者じゃないから人脈がないだろうけど、俺は)顧問の先生知ってるから、練習試合お願いしてあげようか?」
 
 と、親切顔で言われたりしたのですが、正直、余計なお世話なのです(笑)。
 
 強い相手と練習試合をすれば強くなる、などという単純な思考回路はないから(笑)。
 
 強い相手と練習試合をしなければ強くはなりませんが、するだけで強くなるわけでもないのです。
 
 そこらへんのさじ加減が上手くいったときにこそ、チームは強くなる、という、これは僕の経験則です。
 
 たとえば、よくうちの選手を見てくれていて、うちのチーム力やチーム事情を知っている先生が、県外で「ちょうど良い」チームを教えてくれるのは大歓迎なのです。
 
 これから春季総体まで、ごくわずか。
 
 練習試合ができる日数も限られてきます。
 
 慎重に、相手校探さなければなりませんね。