前回の続き。
 
 Aさんからの指摘にあるような「プロでもできないということは、女子には無理なのでは」ということは、まず無いと思います。
 
 プロだからこそ、多少のフォームの悪さを筋力で補っている面があるように見えるからです。
 
 女子高校生でもきれいなフォームで打っている選手は多くいますから。
 
 逆に男子高校生が、パワーだけに頼り、汚いフォームで打てているのを見るとなおさら(笑)。
 
 大胸筋や三角筋、僧帽筋など、重いラケットを振り上げるのに最低限必要な筋肉は、しかし日常生活ではあまり鍛えられない部位です。
 
 女性の場合、男性の50~60%の筋肉量しかない、と言われますから、テニスを始めてすぐの選手がいきなり打つのは難しいかも知れませんが、最低限の筋力さえあれば、スウィングスピードは無くとも、きれいなフォームを獲得することは可能です。
 
 問題なのは、獲得できるのは全ての選手ではない、ということです。
 
 筋力がある男性でさえ、きれいなフォームで打てない人が多くいるわけですから。
 
 うちのチームで言えば、しっかりと理論的に間違っていないフォームで打てている女子選手は、4割~5割というところでしょうか。
 
 学校では「体力テスト」というものを行います。
 
 文部科学省によって統計が取られているもので、全国の高校生がやっていると思うのですが、50m、1500m、反復横跳び、上体起こし などを行い、記録をはかっていくわけです。
 
 やはり男子に比べると、女子のほうが運動ができる生徒とできない生徒の「差」が大きいのです。
 
 そしてその中でも「ボール投げ」がもっとも差が出やすい。
 
 運動部を経験したことがない生徒でも、立ち幅跳びや50mで高い記録を出す生徒は多いのですが、ボール投げだけは無理です。
 
 というより、運動部を経験したことがある生徒でも、ボール投げで投げられる生徒は少ない。
 
 オーバーヘッドで腕を回す運動は、子供の頃からのある程度の経験が必要なんだなぁ、と思います。
 
 決して単純な運動動作ではない、ということですね。
 
「サーブの原理」でもお話しているとおり、実際に全身に起こりえる運動連鎖は非常に複雑です。
 
 それを一つ一つ習得していくわけでなく、様々な練習を通して、それらの運動連鎖をつなげていく、という練習になるので、ただただ数をこなして打てば、サーブが上手くなるわけではない。
 
 また逆に、プロネーションなどの一部の技術にだけ固執し、それだけを習得すれば万事上手くいく、というような間違った理論を持っていたりすると、とんでもないフォームになりかねません。
 
 前述したとおり、男子などは筋力で何とかなってしまうことも多く、身長もある程度あるので、速いサーブが入っちゃう(笑)。
 
 もちろん、安定性もなくコースも狙えず、回転量も少ないのですが、男子高校生は都合の良い場面──試合で1回あるかないかのエース──だけを覚えているので(笑)、フォームを直すことがない。
 
 男子などは、局所的な筋力もしっかりとついていることが多いので、ほぼ全員がキレイなフォームを習得できるはずなのに、それができないことが多いわけですね。
 
 それでは、具体的にどんな視点で練習を取り入れれば良いのでしょうか。
 
 それはまた次回。
 
【次回へ続く】