ちょっと間が空きましたが、練習メニューの立て方についての考え方です。

 
 前回お話したとおり、練習を行う観点としては、
 

1.フォームの習得、修正

2.フットワークやスタンスなどの選択の訓練

3.状況判断の訓練

4.戦術・戦略に関する練習

5.フィジカルを鍛える練習

 
 の5つがあり、それを全て同時に行うことは無理としても、いくつかを組み合わせながら行うことは可能です。
 
 もちろん一つの観点に特化したメニューが悪いわけではなく、その選手、チームの状況によって帰るべき者であると思います。
 
 まず「1.フォームの習得、修正」は、もっとも最初に取り組み、またテニスを続けていくうえで、ずっと取り組むことになるものでもあります。
 
 フォームの「修正」そのものについては、これまで何度かお話をしていることでありますので、そちらに話を譲るとして。
 
 特に初心者がチームにいる場合には、この「フォームの習得」というのがまず最初の壁になるわけです。
 
 もう明らかに、他のメニューとは一線を画します。
 
 他のメニューであれば、ある程度さまざまなレベルの選手が同時に取り組んだとしても形になるのですが「フォームの習得」については、同じレベルの選手だけで行わないと、練習が成り立ちません。
 
 たとえば「フォアハンドの振り方」を習得するとしても、すでにフォアハンドがある程度打てる選手に、一から教えるのは時間の無駄ですから。
 
 逆に、徐々にレベルが上がってきて、
 
「バックのスライスを覚えよう」
 
 っていうときもあるわけですが、これも初心者が多く混ざっていたりすると、そういう「新しいショットの習得」ってメニューを導入している場合じゃない(笑)、ってことになります。
 
 高校などですと、新入部員の多くは初心者ですから4月から同時に始めることができて足並みがそろいますし、学年で横割りにすればある程度レベルもそろいます。
 
 新入生のなかに経験者がいる場合は、その選手だけ上の学年と同じメニューにすればよいのですから。
 
 スクールの場合にも、レベルごとに教室を組んでいる場合が多いですから、これと似た状況ですね。
 
 小さなサークルなどが大変で、だからこそ、サークルによっては初心者お断り、っていうところもあると聞きます。
 
 この「フォームの習得」、いきなり素振りから教え始める人もいるのですが、僕はやりません。
 
 うちのチームなどは、運動神経が高い選手が入ってくる部活動ではありません。
 
 なかには、それまで一切スポーツをやったことがない、という生徒も多く入ってきます。
 
 まず、動くボールに対しての「距離感」が全くない選手が多いのです。
 
 仮想のボールをイメージして素振りをする、ということそのものができない。
 
 また、いくら素振りでキレイなフォームを手に入れても、結局距離感がないため、動くボールになった途端、そのフォームで打つことができない、ということもよくある。
 
 ですから最初は、ラケットを使ったボール遊びから始めます。
 
 特に1年生が入った4月後半~5月ぐらいは、3年生を春季総体に向けて追い込んでいるころ。
 
 そもそも1年生をじっくり見てあげる時間も少ないので、ポイントを押さえておくだけで自分たちでできるメニューを与えることになります。
 
 それこそ、キャッチボールから始まり、ラケットを使ったボールトリックなども含めて行うわけです。
 
 また、最初にボレーから取り組むこともあります。
 
 ボールとの距離感を習得するのに最適な上、スウィングそのものは非常にシンプルだからです。
 
 これは特にジュニアの指導の時に非常に重要になります。
 
 昔、Yahoo!知恵袋でジュニアでの練習内容について質問があり、多くの回答者の方が、ボールを使った遊びを紹介している中、
 
「テニスを習いに来たのだから、子供だからと遊ばせるのではなく、フォームから教えるべきだ」
 
 などと書き込んだ回答者がいましたが、それは運動生理学の基本も知らないバカです。
 
 子供は、大人と比べて、格段に距離感がありません。
 
 だからこそ、大人に比べてよくケガをするんです。
 
 もちろん習得したときの成長は早いのですが、そのためにも、遊び感覚で動くボールとの距離感を掴む練習をみっちりしなければ、素振りだけがキレイな下手な選手を量産することになります。
 
 テニスコートを借りて練習試合などをしていると、空いているコートに家族が来て、テニスの練習をするときもあるのですが、いきなりお母さんが、小さい子にネットを挟んで球出しをして、フォアハンドの振り方を教えているのを見ていると、ちょっと残念に思ったりします(笑)。
 
 神谷勝則氏の本にも、初心者が行う導入のメニューが多く載っていたりしますから、ぜひ参考にしてみてください。
 
【次回へ続く】