シングルスの基本戦術を考えていく上で、改めて思うことは、シングルスの戦術が技術ありき、であるということです。
 
 一定以上の技術がなければ、戦術そのものが成り立たないのです。
 
 普段の練習から、シングルスにおける戦術の組み合わせを考慮したメニューを行わなければ、なかなか勝つことができない、ということになります。
 
 まず、自分のショットの精度を客観的に把握できなければいけません。
 
 ネットに近づくほどに攻撃的なショットを打たなければならないのは当たり前なのですが、このとき、やみくもに打てば良い、ということにはなりません。
 
 ベースラインの後ろでは丁寧なストロークをするのに、アプローチエリアになると急に力んで、極端に精度が悪くなる、というのでは、全く意味が無いからです。
 
 それなら最初から最後まで、どのエリアでもつなぐ戦術のほうが勝てるかも知れないわけですからね。
 
 普段の練習から、徹底して精度を上げる意識を持って練習することが必要です。
 
 テニスを始めたばかりの高校生や大学生は、
 
「強く打つ」→「そのスピードを維持しながら精度を上げる」
 
 という意識で練習しがちです。
 
 しかし実際には、
 
「精度の高いショットを打つ」→「その精度、確率を維持しながらどこまで強く打てるのかを正確に把握する」
 
 ということが必要なのです。
 
 精度の高いショットを打つことが、バランスの取れたフォームを身につけることにつながり、そしてそれは将来的に力まずに鋭いスウィングを生む原動力ともなるのですから。
 
 また、特にアマチュアで意識しなければならないことは、フォアハンドとバックハンドのバランスです。
 
 多くのプレイヤーはフォアハンドのほうがショットの安定性も高く、自由度も高いため、カラダの正面程度のショットであれば、ほぼフォアに回り込んで打つことになります。
 
 実際に試合を行った上で、データを取っていただけると分かると思うのですが、自分が思っている以上に、フォアハンドで打つ回数が多くなるはずです。
 
 よほど自分がバックハンドが苦手で、それを相手に見透かされていない限り、正しいポジショニングをすればするほど、相手に一方方向を狙われることも少なくなるからです。
 
 ですから、自分の中でどれぐらいのショットであれば回り込むのか、ということを意識して練習をしましょう。
 
 これをやっているアマチュアの方が結構少ないのです。
 
 バックよりもフォアが得意で、しかしフォアへの回り込みが甘くミスをしている、というのを気づいていない人が多い。
 
 はっきり言えば、フォアに回り込んでミス、というのは最悪です。
 
 バックよりもフォアのほうが打てると判断した上で、しかし結果としてミスをしているのに、「ショットのミス」で片付けてしまっている人があまりにも多いのです。
 
 以前にも、ショットのミスには3段階あるのだ、とお話しました。
 

1.状況把握のミス

2.判断・選択のミス

3.技術的なミス

 
 フォアハンドに回り込んでのミスは、1.や2.のミスなわけです。
 
 ミスの後、技術的なミスじゃないのに、フォアハンドの素振りをして、
 
(こうやって振れば良かった)
 
 なんていう顔をしている選手、多く見ませんか?
 
 違うのです。
 
 そもそも、フォアを選んだことそのものが間違いである、ということに気づいてないのです。
 
 技術面は、練習を機械的にこなしていれば向上するかも知れない。
 
 しかし状況把握や判断・選択については、かなり工夫した練習内容と高い意識がないと全く身につきませんから注意しましょう。