それではヒジを曲げることの利点は何なのでしょうか?
 
 ヒジを曲げるとスウィングスピードが上がる、とそのコーチが思った本当の原因はなんなのでしょうか?
 
 それは、ヒジを曲げることで上腕の「内旋」運動が、ラケットの前方への振り出しに寄与した、と考えられます。
 
 これは「厚く握るとトップスピン?」のところでもお話していることです。
 
 上腕を内側にひねる「内旋」という動きですが、ヒジを曲げ、その回転軸に対して前腕が直角になることで、ラケットが前に振り出されることになるのです。
 
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 さらに、ストレートアームの場合、腕を振り出すときに使う筋肉は、大胸筋と肩の筋肉だけですが、これに内旋に関する筋肉も加わることで、スウィングスピードが速くなることがあるのです。
 
 ただこれ、元も子もない言い方をすれば、「人による」のです。
 
 カラダのターンが鋭く、大胸筋や肩の筋肉がしっかりしている人であれば、ストレートアームのまま振り出してもラケットを充分加速させることができますし、上腕の内旋をラケットの「振り上げ」に活用した方がラケットヘッドの速度は結果的に速くなる、ということもあり得るからです。
 
 ただ、多くのプレイヤーは回転半径が大きくなり慣性モーメントが大きくなると、筋力が追いつかず、かえってヘッドスピードを遅くしてしまうだけです。
 
 また、ヒジを曲げた打ち方の場合、ヒジが上体しいてはカラダの回転軸に近づくのですから、ヒジの移動距離が短くなるのは当たり前。
 
 しかもラケットを前に振り出すために「内旋」をするのであれば、肩~ヒジにかけての上腕自体が回転軸になるわけで、ヒジがラケットとともに前に出るはずもなく(笑)、ヒジを「止めた」ふうに感じるのではないでしょうか?
 
 現に、問題のサイトでのコーチのフォームを見ると、通常のダブルベンド──つまり、ヒジを曲げることで「内旋」をラケットの推進力に転換しているだけのように見えます。
 
 そのコーチのヒジも、結局、どこでも止まることなく、動き続けていますから(笑)。
 
 したがって、Aさんへの回答を書くとすれば、
 
 肘を曲げることによってスウィングスピードを増す、という考えは、少なくともサイトで説明してる原因とは全く違う理由であり、それはダブルベンドとストレートアームのどちらがよいか、ということにもつながるぐらい、人それぞれで違う
 
 となるでしょうか。
 
【次回へ続く】