今日、生徒と話していて気づいたことがありましたので、ここで少しお話を。
 
 フォームの「タメ」についてです。
 
 Yahoo!知恵袋でも、たびたび出てくる用語です。
 
「タメを作るにはどうしたらよいか」
 
 という質問に対して、様々な回答がされています。
 
 生徒も、テニス雑誌に書いてる「タメ」という言葉に惑わされてしまい(笑)、今日のサーブのときにぼろぼろになってしまったのです。
 
 ボクが思う「タメ」は、これまで何度となくお話ししている「伸張反射」を起こすために、筋肉を伸ばした瞬間、です。
 
 ですから、ボクの中では決して「必須」の技術ではありません
 
 これも何度も言っているように、そもそも伸張反射は無意識下で起こる運動原理ですので、中途半端に行うと制御しきれないからです。
 
 初・中級者が取り組んですぐに習得出来るようなモノではありません。
 
 もちろん、できるようになるとかなり楽ですし、スムーズな体の動きにも直結しますが。
 
 問題になるのは、その「タメ」を作るために、本当に体の動きを静止させてしまう人がいることです。
 
 生徒もまさにそれでしたから、すぐに直させました。
 
 たとえば、反動をつけてジャンプをするとき、ヒザを曲げ、体をかがめてからジャンプをします。
 
 このとき、大腿筋や大臀筋の「伸張反射」を引き起こし、それに随意運動を連動させて大きくジャンプするのです。
 
 ただ、その、ヒザを曲げて体をかがめる体勢は、あくまでも「一瞬」です。
 
 同じ体勢でも、それを静止させた状態からやっても意味が無い。
 
 ジャンプするときも、ヒザを曲げてじーーーっと止まってから跳ぶようなやつ、いないでしょ?(笑)。
 
 伸張反射の神髄は、「適度な強さ」と「適度な速さ」で筋肉が引き延ばされることにあるからです。
 
 筋肉が引き延ばされるところから、収縮されるわけですから、どこかでかならず「ターニングポイント(切り替えの瞬間)」があるはずです。
 
 が、それはあくまでも一瞬でしかない。
 
 あたかも、上に放り投げたボールが、どこかで「速度0」になり、落下に移るのが、理論上「一瞬」でしかないのと同じように。
 
 しかも「サーブの原理」シリーズ」でもお話ししているように、体の各部位の筋肉は次々と連動して動いています。
 
 それこそが「しなる」ような動きにつながっていくことになるわけですが、だからこそ、体全体の各部位で同時に伸張反射させるわけではなく、体全体が静止したような状態になるのはおかしい、ということでもあるのです。
 
 顕著に個人差が出やすいのは、自分のタイミングで打つことのできるサーブです。
 
 いわゆる「トロフィー・ポーズ」のときに、体全体が静止してしまう人がいますので注意してください。
 
 静止画でプロのショットを見ると、どうしてもそういう錯覚に陥りやすいのですが、動画などでプロのショットを見てみると、体全体が完全に静止する、なんてことはありません。
 
 必ず、上半身、とくにラケットを持つ腕は動き続けているはずです。
 
 もちろん、ゆっくりになる地点はありますがね。
 
 特に、トスとラケットアップを同時にするために、両手をバンザイさせるようにするタイプのアマチュアが陥りやすい
 
 トスを上げたときの左手(右利きの場合)は、上に伸ばして静止させることが多いため、左手と同調してあげた右手が止まることは、運動機能上、いたって自然だからです。
 
 それに引き替え、左手でトスを上げてから、右手でラケットを引き上げるタイプの場合、左手と右手がバラバラに動くことが前提となっているので、そういう状況に陥る可能性が低くなるわけです。
 
「サーブの原理」シリーズのでも、トロフィーポーズのお話はしていますし、「タメ」についても言及していますが、動きを止めることは想定していません。
 
 図をごらんください。
 
イメージ 1
 
イメージ 2
 
 これらは「サーブの原理」でもご紹介した画像です。
 
 ラケット面の動きを1コマ(30コマ/秒)ごとに「○」をつけて表したものですが、動きがゆっくりになっているところこそあれ、止まっているところは無いと思います。
 
 フォアハンドも同様です。
 
 テイクバックは、早く、小さく、と言われ続けてしまうと、タイミングを合わせるために、どこかで静止させる必要が出てきてしまうのです。
 
 だからこそ「フォームの改造」シリーズでも言わせていただきましたが、テイクバックの大きさは「適度」にするべきなのです。
 
 特に、プロのフォームを見ると、体幹がしっかりとしていることが「災い」し、どうしても体を「静止」させているように見えてしまう。
 
 フェデラーのフォアハンドストロークを動画などで見て欲しいのですが、よく「タメ」を作っている例として挙げられるフェデラーも、そのラケットヘッドは常に動き続けている
 
 ラケットヘッドが動き続けていると言うことは、体のどこかが動き続けている、ということです。
 
 決して体全体が静止するようなことはない。
 
「タメ」というものを勘違いしないようにしましょう。