今回も、フォームの改造を目指す上で、注意するべきことを考えていきましょう。
2.部分的か全体的か
コーチングをする上で、選手の心を掴むポイントがいくつかあります。
一つは、選手とラリーをしたときに負けないこと、または選手が打てないようなスーパーショットを連発することです(笑)。
そしてもう一つが、的確なアドバイスをすること。
一番効果的なのは、1つのポイントを指摘するだけで、その選手のプレイが劇的に変わったりすることです。
全体的にはきれいなフォームなのに、いまいちしっくりとこない、ちょっとのミスが重なってしまう、というときには、あるポイントだけを修正するだけで、すぐに直ったりします。
ただしそれは、指導することになれたコーチが周りから見ていてはじめて分かることであって、本人の場合、ビデオカメラであらゆる方向から撮影しない限り、なかなか分かるものではありません。
また、部分的な修正は、よほど的確に行わないと、全体的なバランスを崩すきっかけにもなってしまいます。
たとえば、トップスピンを強くしようと、ワイパースピンやパームアウトと呼ばれるラケットの振り方を真似ることがありますよね?
ただ、これは、テイクバック~スウィングの開始にかけて、一瞬でも良いので、ラケットのトップがある程度下がる──ラケットダウンができているからこそ効果のあるフォロースルーなのです。
ラケットを立てたまま、しかもスウィングの軌道そのものもフラットに押し出すような角度にもかかわらず、ボールに当たった後に、フォロースルーだけを真似しても、ほとんど効果が無い。
それでも効果を得ようと思うと、不自然に大げさなフォロースルーになってしまったりします。
つまり、部分的な修正は、
「この部分『だけ』を直せば良くなる」
という確信があってはじめて行えるのだ、と思ってください。
これまでも、サーブのフォロースルーでの「プロネーション」に関する議論を、このブログでもお伝えしてきましたが、あれだって、ラケットの振り出しの瞬間に、ラケットが遠心力で体の外側に投げ出され、「スピネーション」が起こった上で、伸張反射が発生してはじめて意味のある動きなのです。
フォロースルーだけをどんなにねじったって意味が無い。
特にフォアハンドは、利き腕の自由度が高すぎるため、一部分だけを直そうとして、全体が崩れてしまう、ということが起こりやすくなりますので注意してください。
基本的には、前々回、「プロのフォームのまねをするんなら、まずは全部を完璧に」というふうに言いましたが、フォームの修正も、修正したい部分に注目しながら、全体的な変化にも気を配らなければなりません。
全体的なフォームを直すのであれば、一度、フォームをバラバラに崩すぐらいの覚悟が必要です。
1ヶ月ぐらい、まともに打てない、ぐらいのことは、覚悟しましょう。
【次回へ続く】