注意集中を乱す最大の要因が「あがり」です。

 
 以前にもお話ししたとおり「緊張」はその人にとっての「適度な」緊張というものが存在し、高すぎても低すぎてもいけません。
 
「あがり」は極度の緊張に陥った状態をいいます。
 
 まず身体的には、筋緊張の増大がおこりぎこちない動きになります。
 
 呼吸数が増加し、心拍数も早まる。
 
 柔軟性も減少するので、可動域が狭くなり、動きが小さくなります。
 
 心理的な面では、常に「内的」な注意集中が続いたり、「狭い」注意集中が続いたりします。
 
「内的で狭い」っていうのはよくあるんだ、と何度か言ってきましたが、その原因はこの「あがり」がほとんどです。
 
 こういう状況になると、タイミングや調整力がずれて、どれだけフォームを気にしたところできれいに打てない。
 
 焦りから不適切な判断をしてしまいますので、無理のあるショットを選択したり、またビビって弱いショットしか打たなかったり。
 
 心拍数が上がった状態で筋緊張が増大していますから、思いのほか早く疲労が溜まり、ますます動きが鈍くなる。
 
 つまり、悪循環におちいるわけです。
 
 この「あがり」の原因となるのは、自分やチームにとって大切な試合であったり、セットポイントなど、試合の流れの中で重要な場面であったり、コーチやチームメイト、友人や家族などからの評価を気にしてしまったり、と様々です。
 
 しかも、様々な上、これを気にするな、というほうが難しい。
 
 この「あがり」は、練習と「慣れ」で克服するしかありません。
 
 特に、大切な試合や大切な場面、というものは、年間でそう何度も経験できるものではない。
 
 緊張するな、というほうが難しいのです。
 
 緊張しないのは、チームのためにがんばれない、責任感のないバカプレイヤーでしょう(笑)。
 
 そんなプレイヤーになるぐらいなら、緊張した方がマシです。
 
 そして、コーチや家族などの評価についても、練習のころから、家族や仲間のためにがんばる気持ちを忘れなければ、プレッシャーにならないのです。
 
 うちのプレイヤーでも、家族が来たり友人が見に来たりしたときに緊張するタイプの選手は、普段、他人に感謝をせずに練習するやつです。
 
 普段の練習から、家族のために上手くなる、仲間のために強くなる、という意識がないプレイヤーは、そういうのが「カッコいい」と思っているのです。
 
 何も背負わずに、自分のためだけにテニスをしているのが「カッコいい」と思っているのです。
 
 そういう選手は、必ずプレイでも格好つけようとします。
 
 そういう選手に限って、家族や仲間の前で格好つけようとするのです。
 
「普段はがむしゃらに練習してないのに、試合になると本領を発揮する俺」というマンガみたいなキャラを演じたいのでしょうが、そんなやつ、いるわけがない(笑)。
 
 試合は、あくまでも練習の積み重ねでしかないのですから。
 
 地方の1、2回戦ならまだしも、そんな選手は上には行けない。
 
「あがり」やすい選手ほど、普段の練習からあえて「誰かのため」を意識してみてください。
 
 そしてそれを長い間繰り返していくと、自然と、そういう「何かのために、誰かのために勝利を目指す」というのが、ひどくちっぽけに思えてきます。
 
 いつの間にか「誰かのため」ではなく、自分自身がテニスを楽しんでいるだけなのだ、ということに気づくからです。
 
 だから、あえて「何かのため」「誰かのため」にテニスを頑張ってみてください。
 
 いつか、そんなこと、どうにでも良くなりますから(笑)。
 
【次回へ続く】