今回は、並行陣における「守備範囲」についてお話ししたいと思います。
まずは、並行陣のお話をする前に、雁行陣の守備範囲から。
上の図がだいたいではありますが、雁行陣でのそれぞれのプレイヤーの守備範囲、ということになると思います。
もちろん、前衛が上級者であればもっと守備範囲がもっと広くなるでしょうし、初級者であれば、特に後方の守備範囲が狭くなると思います。
守備範囲の「大きさ」にはペアそれぞれの技能が大きく関わるとは思うのですが、雁行陣にはどんなプレイヤーも共通の考え方があります。
1.基本的には左右を分担
2.ただし、前衛の頭上を越え、スマッシュなどができないボールは後衛がカバー
この2つです。
それに比べて、戦術自体がシンプルであるはずの並行陣は、ちょっと難しい。
というよりも、この守備範囲の「割り切り」ができるからこそ、戦術自体をシンプルにできるのです。
たとえば、僕が生徒と一緒に並行陣をやり、僕が右のクロス側だとしたら、守備範囲は次の図のように設定します。
オーソドックス型の並行陣の場合、このような守備範囲にしているペアが多いのではないでしょうか。
まず、左右分担の意識がより強くなります。
ストレート方向(前衛)の頭を越えるショットは、基本的にスマッシュまたはハイボレーでできるかぎり追います。
雁行陣の場合には、スマッシュなどで「決められる」ぐらいじゃなければ、スルーしてもよいのですが、並行陣の場合には、ハイボレーで「返すだけ」の状態でも、前衛に任せることが多い。
クロス側(後衛)のプレイヤーがカバーするのは、本当にベースライン深くに入るようなロブの時だけです。
上級者どうしや、攻撃型並行陣の場合には、完全に左右分担にしているペアも多いのではないでしょうか。
僕はそこまで生徒のスマッシュ力を信用していないので(笑)、僕がカバーするようにしています。
実は、そこらへんの「区切り」がペアによって違うのです。
違うからこそ難しいのです。
特に左右の切れ目を相互に理解していないと、無駄な動きを強いられることになります。
後日ご紹介しますが、並行陣の攻略法の一つに「相手ペアの間を狙う」というのがあります。
にもかかわらず、並行陣のペアに聞くと、
「ストレート側(前衛)が打てないときは、クロス側(後衛)がカバーする」
とかって、意外とアバウトなときが多い(笑)。
だからこそ狙い目だとも言えるのですが、ここらへんの分担がしっかりしているペアは、戦術自体がシンプルにできるため、自動化した動きができるようになります。
即席のペアでは、テニスが「よく分かった」プレイヤーどうしでないと並行陣はできません。
ただただテニスが「上手い」というだけではダメなのです。
よくあるのが上級者と初級者のように実力差が大きなペアでの並行陣での失敗です。
上級者が、
「ダブルスの醍醐味は並行陣だ」
とか何とか格好つけて、無理矢理、並行陣をやってしまい失敗するパターン。
僕のように、生徒の練習のためにやるならば目的と行動が一致していますからいいのですが、ゲームでいきなりやる人がいますので、初級者の方は上級者と組むときは気をつけてくださいね(笑)。
並行陣の守備範囲は「相互理解」が必要なのです。
雁行陣は、その相互理解が浅くても何とかなる。
「後衛がカバーする」という大前提があるからです。
が、並行陣はそうはいきません。
ボールがとれなかったり、相手に任せたりしたときに、
「いやいや、今のボールは、お前が取らなきゃダメだろ。常識だよ、常識」
などということを「『テニスがよく分かってない』中級者」に限って言いますから(笑)。
あくまでも「相互理解」であって、絶対的なルールもなく、ましてや「常識」なんていうので処理されても困るのです。
だからこそ後日紹介する「対 並行陣対策」では、下手な方のプレイヤーを一方的に攻めて、もう一方のプレイヤーに無理なカバーをさせる、という戦術もあるのですから。
並行陣をするときには、ペアの間で、まず一定のルールを決めましょう。
○ センターを狙われたときには、どこまで守れば良いのか。それともラケットが「ガシャッ」ってなるのを覚悟で2人トモが行くのか、それとも2人が前後にズレるようにして追いかけるのか。
○ 頭上をロブで抜かれたときには、クロス側のプレイヤーがカバーに行くのか、それとも完全な左右分担なのか。また、その後にはいったん雁行陣になるのか、すぐに並行陣に戻るのか。
高い技術とペアどうしの相互理解こそが、並行陣のおもしろさと難しさですからね。
【次回へ続く】