先日掲載いたしました「ストロークでのスタンスの使い分け 補足」に関連して、今度は別の方(Bさんとしましょう)から質問をいただきました。
 
スクエア・スタンスで腰を回す際に、右足を引いてしまい、右足と左足がクロスする感じになるのは、いいこと?悪いこと?
 
 というものです。
 
 練習のために、Bさんが自分でビデオで撮影したところ、足がクロスしていたそうです。
 
 僕の説明の中に、
 
左腰の『ずらし』ができないと、右足を横に大きく踏み出す感じになる
 
 みたいなことが書いてあったので、その逆に、左後ろに引いてクロスするのはどうなのか、というご質問でした。
 
 結論を先に言えば。。。。「程度と状況による」です(笑)。
 
 いや、ほんと、適当に言ってるわけじゃなくて(笑)。
 
 実は、右足と左足がクロスすることはあり得ます
 
 そうすると良い、というわけではないが、あり得る。
 
 もちろん、見る角度にもよりますので、
 
・スクエア・スタンスからのスウィング
・最初に両足を結んだラインの延長線と平行にボールが飛んでいく
・正面から見たときに右足と左足がクロスして見える
 
 という厳しめの条件にしましょう。
 
 右利きのフォアハンドの場合、右足で蹴り出すのですが、これがインパクトからフォロースルーにかけて背中側に流れ、左足と右足がクロスするような形に見える、ということです。
 
 これにはいくつか要因があり、その要因として「自然な動き」のもの、「しかたがない」もの、「やっちゃいけない」ものといろいろありますので、それを一つ一つ見ていくことにしましょう。
 
 右利きのフォアハンドの場合、右手で280~310g程度のラケットを振り出します。
 
 回転半径や振り出し速度にもよりますが、100km/h程度のボールを打とうとすると、だいたい20~30kg重の遠心力がかかることになります。
 
 そのままだと、体が右に引っ張られてしまいます。
 
 実際には、そんな強い力で引っ張られるのはほんの一瞬ですし、体全体の重量が重く慣性の法則が働いていますからそんなに大きく移動はしない。
 
 また「左腰の『ずらし』」+「左手の開き」を使うことで左右のバランスがほぼ保たれます。
 
 つまり、そのバランスが崩れそうなときに、右足と左足をクロスすることで、重心をわずかにでも左側に引いてバランスをとることになるわけです。
 
 オープン・スタンスの場合、もともと両足を左右に広げていますし、、右足の蹴り上げによて回転していますから、普通にスウィングをしていてクロスすることはありえません。
 
 また、クローズ・スタンスは、テイクバックの時点ですでに、右足と左足が正面から見てクロスして見えますから、それを論じてもしかたありません。
 
 今回問題にするのは、スクエア・スタンスのときに、左右の足がクロスする原因です。
 
 まず、一番の原因としては、腰が回転していない、ということがありえます。
 
 骨盤が回りきっておらず、実質的にクローズスタンスのようになってしまう、ということです。
 
 原因は、右足の蹴り出しが弱い、左腰の「ずらし」(股関節の「たたみ)ができていない、など様々です。
 
 まあ、つまりは手打ちになっているときですね。
 
 腰が回転しなければ上半身も回らず、ラケットだけが横に出ることになる。
 
 左腰の「ずらし」も左手の「開き」もないために、バランスをとるのはもう、右足を使うしかない。
 
 右腰が後ろに残っているわけですから、そこから右足が骨盤に対してまっすぐ後ろに伸びたとしても、前から見ると、両足がクロスしたように見えてしまいます。
 
 これは「やっちゃいけない」パターンですね。
 
 野球のバッティングでも、読売ジャイアンツの村田選手などが調子の悪いとき、こういう足の使い方をしてしまいます
 
 右に押っつけようとするバッティングを意識してやりすぎると、腰の回転を無意識に止めてしまうため、こういう状態になる。
 
 そうすると上半身に頼ったスウィングしかできなくなります。
 
 だからこそよく「センター方向に打ち返すバッティングが基本」と言われるわけです。
 
 村田選手なんかは、強引に引っ張るぐらいのバッティングしちゃえばバンバン打てるのに、って思いますけど(笑)。
 
 つぎに、体軸が右に傾いているとき
 
 体軸が右に傾くことは決して不思議なことではありません。
 
 程度にもよりますが、低い打点で打つときには、膝を曲げるよりも体軸を傾けてボールを打った方が速いときがあります。
 
 このときには体軸が大きく右に傾いている分、重心も右に傾きます。
 
 そのバランスをとるために右足を引くことがあります。
 
 これは「しかたがない」タイプでしょうか。
 
 斜めになった回転軸と重心の位置を調節するには、それしかありませんから。
 
 もちろん、できれば、そんな傾いた状態にならないほうが良いのですがね(笑)。
 
 こういうタイプの人は、高い打点で打つときには自然と足がクロスしませんので、すぐにチェックができます。
 
 最後に、ジャンプ・ショットのようなときです。
 
 これもしようがない。
 
 蹴り出し足である右足が空中にあって、それでも骨盤を回転させるためには、右足を後ろに(空中で)蹴り出すときの作用・反作用と慣性モーメントを利用するしかありませんから。
 
 エアKのようにオープン・スタンス タイプのジャンプショットならば、右足を右後ろに蹴り出す感じですが、スクエア・スタンスでのジャンプショットだと、どうしても右足が後ろに流れます。
 
 右足を曲げるとよりいっそうそう見えることがありえます。
 
 これは「自然な動き」のパターンです。
 
 これをやらないとかえって骨盤が回らず、手打ちになる可能性の方が高い。
 
 ジャンプショットとまではいかなくても、大きく前に踏み出したり、非常に高い打点で打ったりすることで、早い段階から蹴り出し足が地面から離れているときも同様な現象が見られますので、これも「自然な動き」です。
 
 質問者であるBさん自身は、2つ目の体軸を傾けるタイプだったようです。
 
 打点が低い方が安定してラリーを続けられるので、撮影用にしっかりと打てるように、ヒザ高ぐらいのボールを打つような球出しをしてもらってたそうです。
 
 皆さんも自分のフォームを真正面から撮って確認してみてください。
 
 実際、胸の高さのボールを打ったときの映像では、ほとんどクロスしてなかったそうです。
 
 自分の骨盤が回っているか、体軸は傾いていないか、それとも蹴り出し足が早い段階で地面から離れていないか。
 
 同じ「現象」でも、その「原因」が異なる典型的な例だと思います。
 
 Bさんのご指摘がなければ、スルーするところでした。
 
 ありがとうございます。
 
 今後とも、ごひいきに(笑)。