高校部活動をしっかりとした形で継続するには、さまざまな「齟齬」をクリアにしていかなければなりません。
 
 それは短期的に解決できるものから、長期的なものまでさまざまですし、教員の「業務」に関わることでもありますから、タダで、というわけにもいかない。
 
 ただ、それでも、僕はやるべきだと思います。
 
 まず、短期的に解決できるものとしては、教員の「残業」に関する規定の改正です。
 
 特別手当は無しにして、です。
 
 実は、一部の自治体では、一般の企業のようにタイムカードを導入して教員の手当を削減しようと目論んで、失敗したところがあります。
 
 手当で一律に出していた方が、はるかに安価になったからです。
 
 それほど、時間外に業務を行っている教員が多いわけです。
 
 ただ、その自治体、タイムカードを県の予算で大量に導入した手前、今更辞めることもできず(笑)、教員は実際には残業するにもかかわらず、定時頃にタイムカードだけを押しにくる、っていう状態になっています。
 
 しかし、この「働いた分だけちゃんとお金を出す」という方法でなければ、
 
「勤務時間外の仕事を強制するな!」
 
 っていう人たちを黙らせることはできない。
 
 教員は部活動をすべきだ、と思っている保護者の方々は、是非、行政に言うべきです。
 
 我々教員は組合を通して常に言っていますが、いつも僕らの「ワガママ」として処理されて終わりです。
 
 団体行動権もない僕たちには、それ以上のことはできません。
 
 保護者の方々から言っていただいた方がいい。
 
 これは、お金が欲しいから、というのではありません。まあ、もちろん、欲しいけど(笑)、それが第一目的じゃない。
 
 部活動を「やっている人」と「やっていない人」に区別をつけることで、不公平感をなくすためです。
 
 悪い言い方をすれば、金を出す代わりに黙らせる、とでも言って良いかもしれません。
 
 部活動制度に関する反対がなくなる、というのではありません。
 
 不満を言いづらくする、と言った方が正確です。
 
 まずは、やりもしないのに文句だけをいうやつらを黙らせる方が先決だ、と思うのです。
 
 また、代休措置についてももっと自由度を高くすべきです。
 
 多くの自治体では、大会引率などの代休は、その前後1週間以内にとるように定められていたりします。
 
 しかしこれでは、毎日授業を行っている教師はまず取ることができません。
 
 部活動に不満を持ち、教員は授業さえしていれば良い、と考えている教員こそなおさらそれを理由に代休を取らない。
 
 そして、取らないからこそますます文句が出てきてしまう。
 
 管理職は、教員の引率出張の内容を把握しているはずですから、代休をいつでも取られるようにすれば良い。
 
 たとえば、テスト期間中や長期休業中などの比較的取りやすいときまでストックできるような。
 
 それでも取らないやつには、言わせておけばいいではないでしょうか。
 
 外部コーチの導入については、以前お話ししたことがありますが、これに関しては十分精査した上で導入すべきです。
 
 学校の「放課後」とは言っても、多くの方々はまだまだ働いている時間です。
 
 そんな時間に毎日指導に来られる人の数などたかがしれています。
 
 さらに、その上で、今時の高校生をしっかりと指導できる人がどれだけいるというのでしょうか。
 
 部活動指導は「やってみたい」っていうだけでは務まりません。
 
 だからこそ、僕たち教員でも苦労をしているんですから。
 
 ヘタをすれば「スポーツはできるけどモラルの低いオッサン」に、大事な生徒を預けることになるわけで。
 
 一定確率の「粗悪品」の存在を常に考慮に入れるべきで、しかもそれは決して許される「粗悪品」ではないわけで。
 
 外部コーチの一律導入に関しては、僕は反対です。
 
 長期的なことで言えば、教員の数を大幅に増員する、もう、これしかありません。
 
 今の制度では、教員数が圧倒的に不足しています。
 
 土日、放課後の部活動を分担して担当するためにも、教員数を増やすことがまずは重要です。
 
 一部の教員にばかり負担が行くからこそ、文句が出るわけで、それを軽減することがその目的。
 
 文句を言いそうな教員、また活動が活発な部活などに多くの教員を当て、交替で見られるようにするだけでも、少なくとも「偉そうに」文句を言う教員はいなくなるはずです。
 
 そのためにも、教員の増員は絶対条件だと思います。
 
 そしてここが重要なのですが、教員採用の際に、部活動指導への考えを必ず確認すべきです。
 
 短期的な対応と合わせて、というのが第一条件だと思いますが。
 
 ただ、実際には、各自治体の教育庁の事務方になっているような「お偉いさん方」っていうのが、そもそも部活動指導に熱心じゃ無い人が多く、そういう観点がほとんどありません。
 
 僕なども、新採用のとき、指導主事に、
 
「部活動指導なんか、若いときしかやらないものだ」
 
 と言われたことがあります。
 
 まあ、そういう人だからこそお偉いさんになるのでしょうが(笑)。
 
 そういうアンバランスさを改善するためには、やはり10年以上は必要です。
 
 そしてそれは、僕たち現場の教員だけが声を上げてどうにかなるものではありません。
 
 おそらくは、何も変化のないまま、次から次へと誕生する「高校生」たちは、たった3年間しかない高校生活の中で、教員の『当たり外れ』によって、充実して部活動に取り組めるかどうかが決まってしまい、そのまま卒業していくのです。
 
 このブログを読んでくださっている方だけには分かって欲しい。
 
 多くの教員は、本当の意味での「文武両道」を生徒に求め、そして応援しています。
 
 学校として「部活動をやる生徒」と「勉強をやる生徒」の「分業制」をしいて、いかにも学校全体で「文武両道」を標榜しているような一部の有名高校の宣伝文句にだまされないでください。
 
 だからこそ、今ここで部活動指導をどうにかしなければいけないんです。
 
 優秀な人材を多く確保するにはお金がかかる。
 
 そういう「民間の感覚」こそ、なぜ取り入れないのでしょうか?
 
 理解に苦しみます。
 
 みなさんがぜひ保護者の立場にいらっしゃるならば、お子様の部活動顧問の「苦悩」に、ちょっとした理解をしてあげてください。
 
 何の考えも無しに行動をする教員は、皆さんが思っているよりも圧倒的に少ないのですから。
 
 また逆に、なんの努力もしない部顧問や体罰を振るう教員に関しては、断固とした態度で臨んでください。
 
 お子様のかけがえのない高校生活を、教師が台無しにしては意味がありません。
 
 よろしくお願いいたします。