ここまで、左足着地のほうが体の動きとしては自然なんだ、ということを説明してきました。
 
 では、それでも右足着地になってしまう人は、どのような原理なのでしょうか?
 
「サーブの原理 その41」でもご紹介しましたが、全豪オープン3回戦でフェデラーと対戦したガバシュビリ選手は、フラット系のサーブは左足着地、トップスピン系のサーブは右足着地、という変則的なフォームでした。
 
 一部には、
 
「トップスピンの時は、体が横向きのままインパクトを迎えやすいから、そのまま右足が後ろに残りやすい」
 
 って思っている人がいますが、その人たちにとってはガバシュビリ選手は、全く異質な人物、ということになりますね(笑)。
 
 トップスピンは体を大きく後ろに反らし、その反らした上体を起こす「途中」でインパクトを迎えることで、ボールに縦回転をかけます。
 
 したがって、右足を上げた方がバランスがとりやすいのは当たり前。
 
 ただ、フラットならば右足着地でも良い、なんていうのは嘘っぱちです。
 
 さんざん、それは説明してきましたね(笑)。
 
 問題は、それでもなぜ、ガバシュビリ選手は右足着地になってしまうのか、です。
 
 彼は、フラットサーブの時と、トップスピンサーブの時の、右足の伸展の仕方が違ってしまっているんです。
 
 フラットサーブのときには、腰の回転を優先させるため、しっかりと右大臀筋を収縮させて股関節を伸展し、右腰椎を前方に引き寄せるようにします。
 
 その大臀筋の収縮のため、右足が後方に上がり、自然と左足着地になる。
 
 つまり、大臀筋を使って腰の回転と蹴り上げを「両立」させているわけですね。
 
 が、トップスピンサーブの時には、右半身を押し上げるようにラケットを振り上げたくなるために、「上に伸び上がる(右腰を押し上げる)」ことを優先させてしまう。
 
 体重移動でもお話ししたとおり、ステップイン・タイプの場合、右足の蹴り上げでは、内側広筋を使って、斜め上に蹴り出すことが良いのですが、真上に蹴り上げようとすると、ヒザをまっすぐ曲げ伸ばしすることになる──つまり、大腿直筋を大きく使うことになるんです。
 
 これまで何回かお話ししていますが、大腿直筋は、ヒザを伸ばす筋肉であると同時に、腰椎に連結しているため、股関節を屈曲させるはたらきもあります。
 
 右大臀筋での大腿部の伸展の力よりも、大腿直筋のヒザの伸展の力が大きければ、大腿部が前方向に引っ張られることになりますし、また、大臀筋が収縮し終わった後でも、大腿直筋が収縮し続けていれば(ヒザが伸びきっていなければ)、これまた、大腿部が前方にひっぱられることになる。
 
 右足着地の人の多くは、このガバシュビリと同じ原理だと思います。
 
 これが左足が地面から離れるタイミングや、先ほど言った上半身の筋肉の収縮のさせ方まで複雑に絡むので、似たようなフォームでも右足着地になったり左足着地になったり、はたまた、フラットの時こそ右足着地になる人もいれば、スピンを打つときにこそなる人も出てくるんですね。
 
 次回からご紹介する上半身の使い方を待つまでもなく、これまでのサーブの原理を理解していただければ、まず右足着地はあり得ない、ということがお分かりになると思います。
 
 注意点は、何度も言いますが、右足が後ろに跳ね上がることは「結果」であって「目的」ではないこと。
 
 これをしっかりと頭に入れながら、左足着地のキレイなフォームにしていきましょう。
 
【次回へ続く】