現在「サーブの原理」シリーズでご説明しようとしている「テイクバック」の腕の動きは、プレイヤー自身の視界からは外れたところで行われることが多く、「勘違い」をしやすいところでもあります。
自分が思っている動きと、実際の動きが違うことが非常に多い。
また一番気をつけなければいけないのは、各部位の「位置の認識」です。
たとえば仮に「頭の真上にラケットを持ってくる」っていうイメージを持ってるとしますよね?
でも、実際のサーブでは頭の位置は常に動いていますし、その向きも違う。
自分では「真上」にラケットを持ってきているつもりでも、頭が大きく傾いているときには、「相対的に上」にすれば良いのか、「鉛直上向きに上」にすれば良いのか分からなくなってしまいます。
よくありがちなのは、「手を○○に固定して」っていう表現。
体を大きくひねる中で「『○○』ってどっち?」ってよくなる(笑)。
これはフォワード・スウィングのところでも、詳しくお話ししますが、定点的な第三者からの視界と、常に動いているプレイヤーの視界を、同じレベルで説明しても意味がない。
説明も煩雑になりやすいのですが、そこをきちんと押さえると、非常に理解が深まると思うんです。
そのためには、ぜひ一度、みなさん自身のフォームを、スマホやビデオで撮影してください。
最近では、コンパクト・デジカメでも120コマ/秒の撮影ができるものもありますし(画素が荒ければ360秒/コマもあります)、コンパクトな三脚もあります。
今のご時世、テニス技術の向上には必須だと思いますし、買って損はありません。
なければスマホやカメラ付き携帯でも十分。
前、横(背中側と腹側)、後ろ(ベースライン後ろ)の三方向から撮影するのがベストです。
そのときに、一度、試していただきたいことがあります。
フツーに打つパターンと、わざとゆーーーーっくり素振りをするパターンの2種類を撮影してみてください。
ラケットセットからフォロースルーまで5秒ぐらいかかるとしたら、20秒から30秒ぐらいの時間をかけてゆっくり再現してください。
サーブなんかだと、ゆっくりの素振りの最中、ずっと膝を曲げて上体を反らしているのは大変だと思いますし、ゆっくりジャンプするなんていうのも無理ですから、そこらへんは簡略化すればいいと思いますが、腰から上の回転や腕の振り、できれば体の傾きなど、できるところはすべて完璧に再現するつもりで振ってみてください。
本来なら遠心力や伸張反射で「自然に」起こることも、すべて随意運動で再現してくださいね。
これが、意外とできない。
まず、ゆっくり振れない。
通常5秒ぐらいのサーブだと、10秒未満で終わってしまう人もいます。
自分のフォームのなかで、どの部分がどれだけ時間がかかっているのか把握できていないからです。
また、それをビデオで撮影して、通常のものと見比べると、もう全く違うフォームになっている人がいます。
足の曲げなどは仕方ないとしても、腕の動きとかが全然違う人がいるんです。
普段、どれだけ自分の「動き」を把握せずに、テキトーに振っているのかが分かります。
特に、伸張反射や遠心力など「無意識にできていること」を、本当に何も考えていなかった人は、まずグダグダになります。
ゆっくりなフォームを撮影した動画を、パソコンなどで早送りして再生してみると、すごくおもしろいですよ。
ゆっくり振っているときには違和感のないフォームでも、早送りして通常のスピードに近づけると、
「そんな腕の振りでサーブ打つやつ、おらんやろ」
って見えるときが結構ありますからね。
特に、よく言われる、
「上腕(または腰の回転)をここで急制動させて、その勢いで前腕(またはラケット)を前に」
みたいなフォームが、どれだけ不自然なものかが分かります。
ゆっくりやっているとそうは見えないですし、やってる本人も分かってないことが多いですから。
フォームを修正するときも、本来であれば、ビデオを撮影しながらやったほうが圧倒的に近道になります。
自分の感覚がおかしいからフォームが崩れているわけで、それを修正するのも結局自分の感覚でやっていたのでは、いくらやっても直らない。
特に、フォームについてコーチに言われていることがなかなか再現できないときには、自分の感覚とコーチの見た目とのギャップを埋めるためにも、撮影したフォームを確認しながらやった方が、圧倒的にわかりやすい。
そういう点では、タブレット型の端末などは非常に便利です。
僕も、練習によくiPadを使っています。
デジタルビデオに比べれば、やはり画像は見劣りしますが、即時性は高いですからね。
撮ったその場で選手に見せられるのは非常に大きいと思います。
ぜひ試してくださいね。