さあ、インパクトを終えると、今度はフォロースルーです。
図27の矢印の部分ですね。
しかし、このフォロースルーこそ注意が必要です。
いや、
「フォロースルーがしっかりしていないと、良いサーブは打てない」
などということは言いません。
その逆です。
フォワードスウィングからインパクトまでの腕の動きがスムーズであれば、フォロースルーもそれほど乱れることはない。
ただ、あくまでも「結果」でしかなく、さらにいくらでも誤差の生じる「結果」であることを頭に入れておかなければなりません。
つまり、フォロースルーがダメだからといって、インパクトがダメとは限らず、逆にフォロースルーが良いからって、インパクトが良いとも限らない、っていうこと。
「良いインパクト≒キレイなフォロースルー」ではあっても「良いインパクト=キレイなフォロースルー」では決してない。
ましてや「キレイなフォロースルー → 良いインパクト」では決してないんです。
スウィングはインパクトを中心に、総合的に判断しなければ、とんでもない間違いを引き起こしてしまいます。
アマチュアの場合は特に。
特に「回内+内旋」をしている・していない、というのをフォロースルーの形やラケットの向きだけで判断してはいけない理由をご紹介します。
まずは、スウィングスピードが遅いアマチュアが、フォロースルーだけプロの形を真似することそのものが間違いであること。
これを、テニス雑誌のプロのフォームだけをみて、絶対的な基準にしてしまうととんでもないことになる。
「プロのフォロースルーと形が違う」
というのを口にする人に限って、腕のひねりには「内旋」も必要であることを全く考慮にいれていなかったり、伸張反射の「し」の字も知らなかったりします。
フォワードスウィングからインパクトにかけて、回内+内旋を行うわけですが、そのスピードは人それぞれです。
当たり前ですよね、スウィングスピードや筋力は、みんな違うんだから。
ラケットの運動エネルギーは、ボールの運動エネルギーに転換されますので、インパクト後、ラケットの速度は確実に落ちます。
もちろん、ラケットの重さはボールよりも重いですから、ボールに当たったあともラケットはそのまま遠心力や慣性の法則で前に飛んでいきますし、腕の動きが止まるわけでもない。
それがフォロースルーになるわけです。
が、プロのように200km/hのサーブを打ったあとのラケットの運動エネルギーと、アマチュアの100km/h半ばぐらいのサーブを打ったあとのラケットの運動エネルギーが同じなわけがない(笑)。
プロは、インパクトのあともまだまだ勢いの残ったラケットが、斜め前方に流れていきますが、アマチュアの場合には、ラケットの勢いがかなり弱まります。
それを、フォロースルーだけ真似をしようとすると、スピードが遅くなって本当は止まりそうなラケットを、随意運動で押し込むようにねじらないといけない。
さらに、これも以前言ったことですが、フォロースルーで回内が生じた場合、回内の可動域は非常に狭いため、限界まで回内が起こると、その拮抗的な回外筋が引き延ばされて、回外方向への「伸張反射」が生じるんです。
回内とは逆方向の筋肉が収縮することになりますから、それで回内がゆるやかに止まることになる。
でもそれは、強い回内をしたからこそ起こる現象ですから、フォロースルーだけを見て、
「この選手は回内していない」
と断定するのは、全く無知なコーチということになります。
お持ちのテニス雑誌を確認していただきたいのですが、どのプロも(右利きの場合)、「回内+内旋」のあと、「回外+外旋」方向の伸張反射によって相対的にラケットの先が左側に持ち上がり、フォロースルーの最後には、体の左足側にラケットが抜けているはずです。
例外が一人だけいます。ツォンガです。
彼は、スピンサーブを打つとき、大きく手首を掌屈させるために、右側に流れるフォロースルーになります。
それは彼の強い手首があるからできることで、彼ぐらいしかいませんので注意してください。
それが、随意運動で無理矢理「回内+内旋」をしている人は、腕をひねることだけをテニス雑誌を見て真似しようとしているので、いつまで経ってもラケットが「右側」のまま。
みなさんの周りの、
「これが回内だ!」
って言っている人のフォロースルーを確認してみてくださいね(笑)。
随意運動で「回内+内旋」を行っているから、回外方向の伸張反射を押さえ込んでしまい、腕がスムーズに左側に流れないんです。
しっかりと「回内+内旋」をしているからこそ、左足の方向にラケットが流れていく、という運動連鎖を理解できていない証拠になりますから。
まあ、ツォンガのスピンサーブの真似をしてるんなら別ですがね(笑)。
【次回へ続く】