いよいよ「ポーチ」です。
大切なことが2つ。
ポーチに飛び出す「方向」と「タイミング」です。
![イメージ 1](https://stat.ameba.jp/user_images/20190603/21/dasadasacoach/d7/43/j/o0500072214422145194.jpg?caw=800)
方向は「斜め前」。
前回もお話ししましたが、決してネットに平行に出てはいけません。
クロス・ラリーの場合、相手ショットは斜めに飛んできますので、ネットと平行に出てしまうと、ボールに対して下がりながらボレーをするようになってしまいます。
やっている本人は気付かないのですが、逃げていくボールを追いかけている形になり、無駄な距離を走ることになる。
さらに、ボールの勢いもなくなり、ボールとの相対速度も遅くなるため、ボレーも非常に弱くなってしまいます。
「斜め前」に出るつもりでポーチをして初めて、ボールの軌道に対して直角に飛び出す形になります。
前回お話しした準備段階で、ネットとの間に十分なスペースを作るのはこのためです。
そして、タイミング。
僕が生徒に教えているタイイングは、
「相手後衛が、ストローク・ショットを打つために、フォワード・スウィングを始めた瞬間」
です。
できるだけ早く、しかし相手後衛にサイドを抜かれないタイミング、となるとこれしかない。
腕を引くにしろ、上半身をターンさせるにしろ、ストロークを打つためには何らかの形でラケットを、いったんは後方に持って行く必要があります。
それが例え、まっすぐ引く「ストレート・テイクバック」でも回すように引く「サーキュラー・テイクバック」でも、です。
そして、それと同時に、必ずラケットは前に振り出す瞬間があります。
その瞬間をとらえて、ポーチに飛び出すんです。
フォワード・スウィングを始めるのは、ボールスピードとラケットスピードを計算して、適切な打点で打つため。
ですから、いったんフォワード・スウィングが始まってしまうと、そこから打点を修正し、さらにショットの方向を変えることは難しい。
ですから、その瞬間に飛び出せば、相手後衛の視界に、味方前衛の「ポーチ」の動作が入ったとしても、修正が効かない。
ですから、この瞬間に飛び出します。
さらに、ボレーした後(ミスした後でも)、その瞬間、その場に止まることのできる選手がいるのですが、それはおかしい。
運動をすれば必ず「慣性」が生まれるわけで、そんなに急ブレーキはかけられない。
その場で止まることができる、ということは、それ以前から減速をしている、ということに他ならない。
それでは意味がないんです。
例えミスしたとしても、その場を走りすぎるぐらいの勢いで出なければ、ポーチにはならないんです。
そして、ボレーの狙う場所は、相手前衛の足元。
速いストロークに対して、しっかり見ようとしすぎたり、強くボレーをしようとするとどうしても上半身がボールに正対してしまう──つまり、上半身がボールが飛んできた方向に向いてしまい、どうしてもボレーが相手後衛の方向に行ってしまいます。
ですから、相手後衛には背中を見せるぐらいのつもりで。
打点は多少後ろでもかまわない。
しっかりと、相手前衛の足元に、長いボレーを打てれば最高です。、
ただし、これだけやっても、絶対成功する、というわけはありません。
僕なんかは、スクエアスタンス、セミオープンスタンス、オープンスタンスを混ぜて、打点を変え、さらにスウィングスピードもいろいろ変えますし、ライジングショットも打ちます。
そうすることで、同じ振り出しのタイミングでも、左右を打ち分けることができ、生徒は簡単にひっかかってしまう。
こちらがまだ振り出してないのにポーチに出てしまい、サイドを簡単に抜かれたり、こちらのスウィングが思ったより速くて、ポーチが間に合わなかったり。
ですから、もうそこらへんは、駆け引きなんです。
そういう駆け引きが面白い。
そして、相手に駆け引きを挑み、相手もその駆け引きに乗ってくれば、絶対にミスの確率は高くなる。
ポーチの最大の目的は、もちろん、
「オープンスペースに飛び出して、本来は普通のストロークになるようなショットを『奪う』ようにしてボレーする」
というものですが、それと同時に、相手後衛に、
「向こうは、ポーチがあるから気をつけよう」
と思わせ、気持ちよくストロークを打たせないことにこそあると思うんです。
そうでなければ、いくら前衛が立っていたって、狭い空間で後衛どうしがストローク合戦をしているだけになってしまうから。
それが分かっていない前衛は、ミスを恐れてポーチに出ない。
ポーチでミスをすることよりも、相手後衛に、
「あ、ミスを怖がってポーチに出ないタイプの前衛だな」
と思われることの方が100倍危険なのに。
みなさんは、どうですか?
ポーチを「成功」させることばかり考えて、結局ポーチに出てないゲーム、多くないですか?
戦術とは、数ある手持ちの「カード」で次々とポイントを取ることだけではありません。
「切り札」を持っていると思わせることで、相手の選択肢を狭めることも、戦術の大きな要素なんです。
というか、それこそが大きい。
全ての戦術を成功させることはできないですが、「見せる」だけならできるんですから。
みなさんも、どんどん、ポーチに出てください。
また、もしも、あなたが後衛で、味方前衛がポーチに出て失敗したときも、
「ありがとう」
という気持ちを忘れずに。
相手後衛の選択肢が、1つ狭まったのですから。
【次回へ続く】