ボールをつぶすように打つ理由の2つ目。
② ボールをつぶすように打つと、ラケットとの接触時間が長くなり、ボールスピードを上げることができる。
これは、ビミョーに間違い、というところでしょうか(笑)
この現象を証明するために、ネットなどでよく用いられる物理学の式は、
「力×時間=運動量の変化」
というもの。
これが、ラケットで押す「時間」が長ければ長いほど、ボールは速くなる、という根拠になっています。
言葉は悪いですが、中途半端に物理の公式をネットなどで調べてしまうと、こういう間違いが起こる。
実はこの公式自体、使い方を間違えやすいものなんです。
この場合の「力」はあくまでも「加速度」で計算しないといけない。
ある物体を 50km/h で 1時間押しても 2時間押しても、50km/h であることには変わりませんからね(笑)
50km/h のボールの後ろを 50km/h のラケットが追いかけても全く意味がない。
それは、この公式でいうところの「力」ではない。
そのラケットがボールを押し続けて、つまり加速し続けてはじめて、ボールは接触時間に比例して「速く」なるんです。
でも、それを考えると、
ボールが接触している間は加速し続ける
→ラケットが加速しきる前にボールと当たっておかないといけない
→ラケットは、トップスピードでボールと接触してはいけない
となってしまいます。
それなら最初からトップスピードで当てればいいじゃないか、と(笑)。
ただ僕たちは、ボールとの衝突でラケットスピードは落ち、そこから再び腕の力で加速し直している間に、ボールが打ち出される「感覚」を持ってしまうので、いかにも「力」をボールに加えているように感じてしまう。
ボールがつぶれるぐらいのスウィングスピードだと、ボールとの衝突によるラケットスピードの減速が少なくて済み、そこから「加速しなおす」のも速いからなおさらです。
ただしそもそも、実際のラケットとボールとの接触時間はたかだか 5/1000秒 前後。
ボールがラケット面でつぶれて接触時間が長くなったからといっても、1000分の数秒の差でしかない。
たとえば、5/1000秒の間にラケットスピードを 50km/h から 51km/h にたった+1km/h 加速させようと思ったら、ラケットスピードを 1秒間 に +200km/h 上昇させるつもりで振らないといけない。
ありえないでしょ?(笑)
これが7/1000秒ぐらいに長くなったって、無理なものは無理なんです。
つぶれている時間が長ければ長いほど、つまりボールが大きくつぶれればつぶれるほど、結局①でお話ししたように、反発係数は小さくなるわけですし。
どうでしょう?なんとなーくイメージがわいていただいたでしょうか。
結局、つぶすことそのものは、ボールスピードを速くすることにはまったく寄与しないということです。
言い換えれば、
「ボールがつぶれるほど強くラケットを当てれば、ボールが速くなって当たり前」
ということになります。
【次回へ続く】