「スウィング・ウェイト」とは、その名の通り、ラケットを「スウィングした(振った)」時に感じる「ウェイト(重さ)」のこと。
初めて聞いた方もいらっしゃるかも知れませんし、前述したとおり、
「トップヘビー、トップライトとどう違うんだ?」
と思われている方もいらっしゃると思います。
実は、厳密な用語解説をすると、「トップヘビー」「トップライト」は、ラケット長に対して、重心がどこにあるのか、を示したものにすぎません。
ものさしなどの薄い板などを支点にとしてラケットを置いて、バランスがとれる場所で判断したり、ラケット長のちょうど真ん中で板にのせたときにどちらに傾くか、で判断します。
たとえば、ラケット長のちょうど真ん中を支点にのせたとき、ラケットトップ側に傾けば「トップヘビー」。
板をラケットトップ側にずらすと、バランスがとれることになります。
それに対して、ラケット長のちょうど真ん中を支点にのせたとき、グリップ側に傾けば「トップライト」。
板をグリップ側にずらすと、バランスがとれることになる。
通常、一般プレイヤーがラケットを選ぶときには、これしか考えないんです。
それは決して、追加コメントのように、「スイングウエイトというスペックは、重さとバランスで十分に代用でき」るからではまっっっっっっっったくない!
もう、これは、簡単な物理学なんです。
たとえ話をしましょう。
A君、B君、C君の3人は、師匠から、ある課題を与えられます。
「ここに、重さ300gの物質がある。
これを使って1本の棒を作りなさい。
ただし、長さは『70cm』、バランスはかならず『ど真ん中』にすること」
そこでA君、B君、C君はそれぞれ棒を作り上げるのですが、3人とも個性も技術もバラバラなので、棒は3種類できることになったんです。
それが下の図。
同じ重さ、同じ長さ、同じバランスでも、いろいろな形状パターンがあることが分かっていただけるでしょうか?
「テクニカル・テニス」にも詳しく解説されているので、ぜひご参照ください。
この3つの棒の端をもってそれぞれ振ったときに、「同じ重さ」に感じるテニスプレイヤーが、世界中のどこにいるというんでしょうか?(笑)。
それこそが「スウィング・ウェイト」なんです。
振ったときに感じる、ラケットの重量感、とでも言えばいいでしょうか。
つまり、長さや重量、重心バランスが同じでも、「スウィング・ウェイト」が違うことはあたりまえのようにあり得るんです。
実は、昔は状況が異なります。
木製のラケットの場合、ラケットの先からグリップまで、同一の合板で作られていましたし、ラケットの形状にそれほど多くのバージョンもありませんでしたから、スウィングウェイトと実際の重量バランスとは、決して同じではなかったものの、相関関係が強かったんです。
それでも「相関が強かった」だけで「全く同じ」ではない。
その上、現代ラケットは違います。
ウィルソンかプリンスかで、ラケットトップのフレームを極端に太くしたものが発売されたこともありましたし、フレーム形状や構造、内部のカーボンファイバーの編み方までいろいろ。
ラケットの素材は、カーボンファイバーやグラスファイバーが主流ですが、それらを固めるために樹脂でコーティングされていたりするわけで、その量もラケット面部分とグリップ部分ではもちろん違う。
(ちなみに、カーボンなどは非常に耐久性の高い物質ですが、これらを包んでまとめているプラスチック樹脂の耐久性はそれほど高くないため、ラケットにはれっきとした「寿命」があります。(もちろん、最近ラケットの寿命は、どんどん「長く」はなっています)
これも多くの方が間違うところですから注意してください。
特に普段からハードヒットをしていたり、劣悪な環境でラケットを保管していたりすると、極端に短くなりますよ)
さらにフェイス部分の形状は千差万別ですから、もうバランスがどこ、とか言ってる場合じゃないんです(笑)。
だから「スイング・ウエイトは、今現在もバランス値と同義です」なんていうのは30年以上前の古い考えに固執している証拠でしかない。
だって、現に違うんだもん。
上の図を見て理解できない人は、世の中にはいないと信じて、ですが(笑)。
【次回へ続く】