一部の記事を非公開としてしまいましたので、その中でお話しした重要な内容を、もう一度。
コーチングに必要な技術の一つに「鑑別診断」というものがあります。
「鑑別診断」とは、もともと医学用語で、患者が訴えるさまざまな症状を勘案することで、その原因となる疾患を突き止める医療行為のことを言います。
たとえば、発熱。
普通、発熱と言えば「風邪」ですが、実際には発熱を伴う疾患はたくさんあります。
いわゆる「感染症」の多くがそうですが、同じ「感染症」でも、インフルエンザもあれば、ウィルス性髄膜炎もある。
また、希にではありますが、悪性リンパ腫も発熱を伴う病気の一つです。
たとえば、皆さんが仕事中イスから立ち上がろうとしたら、背中に痛みが走ったとして、そのとき、どう判断しますか?
背骨の痛みや背筋の損傷、は甘い甘い。
気胸もありえますし、下手をしたら、腎臓疾患かもしれません。
つまり、様々な症状を総合的に判断して初めて、「疾患」というものが浮き彫りになってくるんです。
ただ、そのためには、数え切れないほどの症例を頭に入れておく必要があります。
スポーツでのコーチングも同じ。
たとえば、ボールの軌道や回転数はラケットとの衝突によって決定しますが、その接触時間は、わずか5/1000秒あまり。
物理学上、フォロースルーは、ボールの軌道や回転数には一切関係ありません。
下手をすれば、インパクトの瞬間さえ良ければ、テイクバックだって、適当で良いかもしれない。
ただ、以前やっていたブログでこうやって言ったら、最後まで記事を読めない、または読解力の低い(失敬!)人は言うんです。
「フォロースルーやテイクバックをいい加減にやって、良いショットを打てるモンなら打ってみろ」
って(笑)
いやいや「インパクトの瞬間さえ良ければ」って断ってるのに(笑)。
別に、テイクバックもフォロースルーもどうでもいい、って一言も言ってない。
ただ、頭の中で、高校の時にやった「十分条件・必要条件」をちゃんと思い出してほしいんです。
たとえば、
《 「ちゃんとしたテイクバック」 → 「ナイスなインパクト」 》
これは、成立しやすい。
「ちゃんとしたテイクバック」は「キレイなインパクト」の十分条件です。
ただし、必要条件か、と言われると。。。「絶対必要」ではない、ってこと。
だって、同じ速度同じ角度のボールを打つときに、全く同じテイクバックじゃないと打てないか、っていったら、違うでしょ?
つまり、
《 「ナイスなインパクト」 → 「ちゃんとしたテイクバック」 》
とは限らないんです。
また、
《 「ナイスなインパクト」 → 「キレイなフォロースルー」 》
も。。。絶対ってわけじゃない。
だから、
《 「キレイなフォロースルー」 → 「ナイスなインパクト」 》
も、絶対は成り立たないことっていっぱいある。
すっごいフォームがキレイでも、アウトするときはアウトするんだもん(笑)。
ここまで言うと、また日本語が通じなくて、誤解されることも多いんですが、もちろん、僕も体感として、ちゃんとしたテイクバックで、インパクトに向かい、キレイなフォロースルーで振り抜けたときは、もちろん良いボールが行くっていうことは重々知っていますから、安心してください(笑)。
ただ、フォームの「形」だけにlこだわると、運動特性の本質が見えなくなるんです。
つまり、この「絶対じゃない」っていう感覚を、常に持っていないと。
フォームなどはあたかも鑑別診断のように、「全体的」そして「立体的に」判断しないと、ダメなんです。
「オープンスタンスじゃなければ、トップスピンは打てない」
っていうばかげた理論を、松岡修造や伊達選手、デルポトロの前で大声で叫んで見てほしい(笑)。
もちろん「ナダルほどのトップスピンはなかなか打てない」なら分かる。
でも「鑑別診断」的な考え方ができない人は、「0」か「1」なんです。
そういう人は、「絶対」って言っちゃう。
「熱が出てないなら、絶対インフルエンザのわけがない」
って決めつけるヤブ医者のように。
自分が知っている症例が少ないモンだから、自分が「間違っている」のさえ分からない。
「フォームは千差万別」
っていうことと、
「そのフォームの本質や、本当の狙いはなにか」
っていうのを、常に考えていないと、とんでもないことになります。
目的論と結果論との違い、といってもいい。
コーチングって、難しいですよねぇ。